帯広の夜、そして朝 ― 屋台からホテルまでの小さな波紋

帯広の夜は、屋台で夕食をとり、土地の風情を味わうことを楽しみにしていた。
お目当ての屋台に予約の電話を入れたが、呼び出し音のまま一向に繋がらない。仕方がないので、予約なしで行こうと決め、飛行機に乗り込んだ。
ところが、機上でふと気づいた。
最近はコロナの勢いが再び増しており、インフルエンザも流行しているという。この時期に知らない人同士が肩を寄せ合う屋台に行くのは、いささか無用のリスクかもしれない。電話が繋がらなかったのは、もしかすると神様の思し召しであろう。予約もしていないことだし、気楽に帯広時間を楽しむことにした。
18時まで営業している六花亭本店を訪ねた。
お菓子はもう十分に堪能していたが、帯広を訪れるたびに文化活動を続けている六花亭に敬意を表して、本店を訪れることを自分の習慣としている。
電気の灯った入り口の雰囲気もまた、ここならではの温かみがある。

この日の目的のひとつは、賞味時間3時間の「パリパリパイ」を味わうことだった。
ただ、かつて無料だったコーヒーに150円の値段がついていたのは、少し寂しく感じた。時代の流れというものだろう。
思えば、六花の森では入場料が1000円であったが、庭園内の休憩所では軽いお菓子とコーヒーが無料で提供されていた。そうした心遣いも六花亭らしい文化の香りである。
昼食を軽く済ませていたせいもあり、パリパリパイはすんなりと胃に収まった。
家人にとって帯広の思い出は、屋台で食べたラクレットである。幸いホテルのレストランメニューにもラクレットがあり、私の好物であるパエリアもあるという。こうして夕食はホテルでとることに決まった。

レストランの夕食は期待どおり美味しく、温泉にゆっくりと浸かって旅の疲れを癒した。
初日の夜は静かに更けていった。
翌朝、早めの出発のため、朝食会場へは早い時間に向かった。
おかゆを注文し、久しぶりに温かなものをいただいてお腹を休ませていると、パジャマ姿のカップルが現れた。
少し場違いな光景に違和感を覚えていると、さらにパジャマ姿の青年まで現れた。ほとんどの宿泊客はきちんと服を着ており、その中でパジャマ姿はひどく目立っていた。
チェックアウトの際、フロントで「朝食会場にパジャマで来られる方がいて気になった」と伝えると、若い女性スタッフは「何が悪いのですか」と逆に問い返してきた。
「朝の食事の場にふさわしくないのでは。通常は着替えて行くものではないでしょうか」と返すと、「当ホテルはパジャマで行けるレストランになっております」との答え。
知らなかった私に落ち度はあるかもしれない。
だが、その言葉遣いや態度に宿の品格を感じ取ることはできなかった。
経営者が変わったとは聞いていたが、まさかここまで変わっているとは思わなかった。残念ながら、二度とこのホテルに泊まることはないだろう。
こうして、少し苦い気持ちを抱えながら帯広の二日目が始まったのである。
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