美瑛・青池──美しさの陰に見える課題

いよいよ旅も最終日である。この日の楽しみは、十勝岳の紅葉であった。
新千歳発伊丹行きの便は午後四時半。使える時間は午前中のみである。したがって、この朝も早起きして出発することにした。


                       旭川駅前 日の出前

まず、美瑛の「ジェットコースターの路」を経由し、青池へと車を走らせた。午前八時半過ぎに到着すると、既に観光バスが数台停まっていた。青池は観光客が多いと聞いていたが、シーズン終盤にもかかわらず、その賑わいは他の観光地とは比べ物にならないほどであった。午前八時半にこの人出である。

しかし、池の青さはこれまでに見たどの時期の「青池」よりも青く澄んでおり、まさに名にふさわしい美しさであった。早朝という時間帯が幸いしたのかもしれない。
池の周囲は観光客でかなりうるさく賑わっていたが、水面は小さなさざ波が立ち、白樺の葉がサラサラと風に揺れていい雰囲気を作っていた。

青い池が形成されたのは、1988年の十勝岳噴火後である。火山泥流を防ぐために美瑛川本流に堤防を築いたところ、水が溜まり、現在のような景観を生んだ人造池であるという。
また、池が青く見える理由は、美瑛川の水と白金温泉「白ひげの滝」の地下水が混ざり、コロイドと呼ばれる微粒子が生成されるためである。このコロイドが波長の短い青い光を散乱させ、独特のミルキーブルーを生み出している。
アップル社のMacBook Proの壁紙に採用されたことで、一躍世界的に知られるようになった。

駐車場から池は目の前である。混雑を避けたいので、池を一周することはせず、早々に戻ることにした。
その途中、立派なトイレが新設されていたので立ち寄ろうとしたが、入口は人であふれていた。スルーしかけたところ、ガイドが「もう一つのトイレが使用できます」と声をかけ、団体客がそちらへ移動した。そこで覗いてみると、小さなトイレで個室は三〜五室ほどであった。
しかし、そのうちの一室を開けた瞬間、言葉を失った。前日からの汚れとは思えぬほどの汚れであり、到底使用できる状態ではなかった。私は思わず飛び出してしまった。

青い池は夜間ライトアップも行われているため、清掃の時間が取れなかったのかもしれない。しかし、朝早くから観光客が訪れることは駐車場の係員は大勢いるのだから承知しているはずである。駐車料金は500円。長居する場所ではないとはいえ、観光地としては妥当な額であろう。だが、トイレ清掃の費用ぐらいは十分に賄えるはずである。それにもかかわらず、観光客の数に見合ったトイレの整備がなされていないのは残念である。

気になって美瑛町役場のサイトを確認したところ、すでにトイレに関する苦情が寄せられていた。役場は「今後は環境整備に尽力して参ります」と回答していたが、その気配は現地では感じられなかった。

自然が生んだ奇跡のような美しさを持つ青い池。しかし、その美しさの陰で観光インフラが追いついていない現実がある。
残念ながら、現状のままでは「青池」は胸を張って勧められる観光地とは言い難い。
今後、行政と地域が協力し、この美しい景観にふさわしい環境整備がなされることを強く望むものである。

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