紅に染まる湿地 ― 能取湖とサロマ湖のサンゴ草をめぐって

何年ぶりかの願いがようやく叶う日だった。
向かったのは、網走の「能取湖・卯原内サンゴ草群落地」

車を駐車場に停めた瞬間から、目に飛び込んできたのは一面の紅。
湿地一帯がサンゴ草で染まり、まるで湿地に赤い絨毯を敷いたようだった。
整備された木道は遠くまで続き、「好きなだけ見ていきなさい」とでも言うように、穏やかに広がっている。
風がやさしく吹き抜け、紅い波がゆらりと揺れた。


サンゴ草は能取湖だけでなく、もう一か所にも群生地がある。
「サロマ湖・キムアネップ岬サンゴ草群落」だ。
こちらはあまり知られていないが、サンゴ草のすぐ近くまで歩いて行けるのが魅力。
そして何より、サロマ湖に沈む夕日は「日本屈指の美しさ」と言われるほどで、キャンプ場も併設されている。
車をサンゴ草のそばに停めると、車内からでもその赤を楽しめるが、せっかく来たのだからとサンゴ草の近くを歩いた。
吹く風に紅がゆらぎ、満足感が込み上げる。



さて、サロマ湖といえば「ホタテ」である。
以前、宗谷岬から南下した際、猿払海岸で見かけた帆立の貝殻の山に驚いたことを思い出す。
このあたりには美味しいホタテ料理を出す食堂が数多くあるが、その中でも口コミの良かった「ところ」に足を運んだ。
日曜日とあって混雑を覚悟していたが、昼の時間を少しずらしたおかげか、思いのほかすぐに席に通された。
それでも次々とお客さんが入ってくる様子を見て、運の良さをしみじみ感じた。
お目当てはもちろん「ホタテ丼」。
しかし、メニューに「ウニとのミックス丼」があると知れば、もう迷う理由はない。



「もう来られないかもしれないから」と言い訳しつつ、思いきって贅沢をした。
新鮮なホタテの甘みとウニの濃厚な旨味が口いっぱいに広がる。
サロマ湖で見た紅のサンゴ草、そして堪能した帆立丼。
どちらも長く心に残る景色と味だった。
思い残すことのないように湖畔をあとにし、今夜の宿「遠軽・マウレ山荘」の夕食に遅れぬよう出発した。
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