冬の到来を告げる赤い宝石――セイコ蟹の夕餉

福井県で水揚げされる「越前がに」の漁は、毎年11月6日に解禁される。
メスの「セイコ蟹」もオスと同じ日に解禁されるが、資源保護のため漁期は短く、12月31日までである。
したがって、年内しか味わえぬ貴重品である。
家人は、子供の頃にはこのセイコ蟹を「おやつ代わり」に食べていたという。しかし今では高嶺の花である。
オスの越前がにともなれば、シーズン中に手の届くものではない。
まだ手が届いた二十年前には、嫌になるほど食べていたから、今は手に入らなくても何とも思わずにいられるのは幸いである。地元に近く住んでいても、手に入る機会はそう多くない。たまに「ひょん」としたご縁で、頂き物や知り合いの特別な手配によって口にできる程度である。
それでも「越前蟹」は、冬の訪れを告げる大切な風物詩である。
今年の立冬は11月7日金曜日。その一日前、11月6日に漁が解禁となった。これからの日本海は荒れやすく、毎日漁に出られるわけではない。そのため価格は時価であり、買う方にも覚悟がいる。だが、その緊張感すら冬の楽しみの一つである。
荒れた海と蟹のゆでる匂いを求めて、あえて海沿いの道を選んでドライブする。白い飛沫が風に乗って車にかかることもある。想像するだけで胸が弾む、冬の始まりである。

そんな折、玄関のチャイムが鳴った。出てみると、友人が思いがけない贈り物を抱えて立っていた。「セイコ蟹」である。
思ってもみなかった蟹の到来に驚いたが、目は彼女の手にある袋から離れなかった。
「はーい」と事も無げに渡してくれたが、受け取った私はその瞬間、アドレナリン全開であった。
調理は例年どおり家人に任せた。
今夜の夕餉の主菜は「鰺の南蛮漬け」の予定であったが、急遽「セイコ蟹」へと変更した。
秋の夕暮れに、真紅の甲羅が眩しく輝いていた。
思いがけない幸運に感謝しながら、冬の味覚を心ゆくまで味わったのである。
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