診療所で出会った水彩画の贅沢

病院の待ち時間が楽しみになる――普通はあまり考えにくいことである。
ところが京都駅に隣接する西村診療所では、それが起こる。

土曜日、友人の半年ぶりの健診に同行してこの診療所を訪れた。
ここは実に居心地がよい。待ち時間が苦にならないのである。

その理由とは。
院内のあちこちに、TBS番組「プレバト!」の水彩画コーナーでお馴染みの野村重存先生の原画が、所狭しと飾られているからだ。

しかも、それらをかなり近い距離で観ることができる。
絵を観る者にとっては、ちょっとした贅沢な空間である。

テレビで拝見するたび、思わず「うーん」と感心してしまうのだが、やはり原画の迫力は格別だ。
細部まで眺めていると、時間の経つのを忘れてしまう。

とりわけ水しぶきの表現には目を奪われた。
水彩であの一瞬の動きを表すのは容易なことではない。
水の透明感や勢いが、紙の上で見事に生きている。

不思議なことに、院内で熱心に絵を眺めている人はあまり見かけない。
おかげで私は、ほとんど独占状態でゆっくり鑑賞することができた。

もっとも今回、多くの原画を間近に見ていて、ひとつ気づいたこともあった。
写真のように精密な描写は確かに見事なのだが、それが必ずしも私の一番の好みというわけではないらしい。

やはり私は、安野光雅さんの、あのふわりとした柔らかなタッチの絵が好きなのである。
昨年四月、津和野の美術館を訪れたときの印象が、今も心のどこかに残っているのだろう。

それにしても「プレバト!」の水彩画コーナーに挑戦する人たちの作品は、どれも素人離れしている。
今週の放送では、とりわけアン・ミカさんの絵が印象に残った。

モデルとして大成功している彼女に、絵を本格的に学ぶ時間があったとは思えない。
それなのに、あれほど完成度の高い作品を描けるとは、いったいどこから来る才能なのだろう。

この世には、ときに非凡な才能を持つ人がいる。
彼女もその一人なのかもしれない。

これまで私は、大阪弁で賑やかな彼女のコマーシャルに少々閉口していたのだが、今回の絵を見てすっかり見直してしまった。
気がつけば、彼女のことを少し好きになっている。

多彩な才能に恵まれた人は、やはり羨ましい。
とはいえ、普通の人間である私にも、もしかすると磨けば光る何かがあるのかもしれない。
そんな他愛のない妄想も浮かんでくる。

考えてみれば、病院の待ち時間でこんな気分になれるのは珍しい。
次にここへ来るときも、きっと新しい絵を探してしまうだろう。
たまには、こんな豪華なクリニックの「付録」にありつけるのも悪くない。

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