日本人の心を揺さぶるタンゴ、その秘密を探る

待ちに待った今年最初のタンゴコンサート。会場はノスタルジックな雰囲気漂う旧大津公会堂だった。
1時間もあれば時間を持て余すだろうと思い、余裕を持って出発したものの、国道はまさかの大渋滞。時計を見るたびに焦りが募る。ようやく会場に到着すると、すでに満席で、空席を探すのも一苦労。どうにか隙間を見つけ、滑り込むように座った。
いつも思うことだが、タンゴのコンサートは男性が多い。今回もほとんどが男性で、年齢層は演奏者の親の世代にあたる方々が多かった。会場は静かながらも熱気に満ち、演奏が始まる前から期待が高まる。
今回のコンサートは、タンゴデュオ「タンゴ・グレリオ」とサクソフォン奏者・本田千鈴さんによるジョイントコンサート。どうやら多くの聴衆のお目当ては本田さんのようだ。
通常、タンゴはギター、バンドネオン、バイオリンで演奏されるが、本田さんはサックス奏者。特にバイオリンの高音部分をソプラノサックスで奏でることで、会場を魅了していた。ファンたちはその独特の音色に酔いしれている様子だった。
幕開けは「ホテル・ビクトリア」。バンドネオンの軽快なリズムがホール全体に響き渡り、心が弾む。自然と指先が膝の上で踊り出す。音楽が心に染み入り、演奏者の情熱がひしひしと伝わってくる。
演奏を聴きながら、「タンゴはなぜ日本人の心に響くのか」と考えた。調べてみると、「タンゴと日本人」という本に興味深い記述を見つけた。「歌謡曲のなかでも最も日本的といわれる演歌にもタンゴ調の曲がある」とのこと。確かに、戦後の日本はアルゼンチンに次いで世界で2番目にタンゴに熱中した国だと言われている。
例えば、「霧子のタンゴ」「赤い靴のタンゴ」など、戦後に急激に流行したタンゴのリズムは、その後の歌謡曲にも生かされ、私たちは子供の頃から親しんできた。そう言われると納得できる。これらの曲は今でも鮮明に思い出せるし、当時は毎日のように耳にしていた。
謎が解けたことで、自分の音楽のルーツを見つけた気がして、ホッとした。私は津軽三味線が好き、タンゴが好き、シャンソンが好き。そのルーツは案外ひとつなのかもしれない。
約2時間にわたり、15曲のタンゴが演奏された。まるで日本の歌謡曲を聴くような安らぎを覚え、心地よい時間が流れる。ラストの曲「ル・クンパルシーター」では、会場の空気が最高潮に達し、演奏が終わると惜しみない拍手が送られた。
タンゴの持つ情熱と哀愁が、日本人の心に深く根付いていることを改めて実感した夜だった。次回のコンサートが待ち遠しい。
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