二十一世紀の友に贈る 平和へのメッセージ 深谷松男著

本書は、著者の教え子を通じて紹介され、手に取ることとなった一冊である。タイトルにある「二十一世紀の友に贈る」という言葉には、どこか温かな響きがあり、親しみを感じて読み進めた。
著者は長年、法学の研究とキリスト教教育の現場に身を置きながら、人生を通して「平和とは何か」を問い続けてきた人物である。本書には、その深い思索の積み重ねが丁寧に綴られている。
中でも特に印象的だったのは、「憲法の第二段落第一文の重みを知って欲しいと願っています。憲法は語ります。日本国民は『諸国民の公正と信義に信頼して、我らの安全と生存を保持しようと決意し』ているのだ、と。読み間違ってはいけません。これは決していわゆる他者依存、『あなた任せ』の姿勢ではありません。『公正と信義』こそ、他者を動かし。その態度を正す最も力のあるものであることを踏まえているのであり、その意味で勇気ある行動の源であると知っている言葉なのです」という一節だった。
かつてこの本を勧めてくれた彼女と「戦争と防衛」について語り合ったことがある。私は自己防衛力を強化するしかないと主張し、彼女は「無抵抗」を訴えた。議論の末にたどり着いた結論は、「無抵抗」で理解し合えたということだった。
本書を読み進めていくうちに、憲法の条文など難しそうなものでも、著者のやさしい解説を通してなら、自分にも理解できるのだと気づかされた。平和とは、ただ戦争がない状態を指すのではなく、人と人との間に信頼と理解が存在する状態を意味するのだという言葉が心に残った。
しかし現実には、昨今のように憲法の解釈が都合よくねじ曲げられ、「集団的自衛権」は憲法上認められるのだとして、同盟関係の相互防衛が進められている現状がある。憲法論についての専門的な知識は持ち合わせていないが、本書ではその背景や問題点にも丁寧に触れられているので、ぜひ読んで確かめてほしい。
本書の中で、ある歌に出会った。
「果実のように見えないままで内部から甘く腐ってゆく時代です」――さとうますみ
この言葉は、現代の私たちの社会を鋭く表していると感じた。外見は立派で美しく見えても、その内側から静かに腐敗が進んでいる時代ではないか。この歌は、ぜひ覚えておき、常に思い返したい言葉である。
本書は、過去の反省に学び、未来に責任を持つという視点から、平和を「自分ごと」として捉えるための大切なヒントを与えてくれる。今を生きる私たちがどうあるべきかを優しく、しかし確かに問いかけてくれる一冊であった。このメッセージが、より多くの人に届くことを願ってやまない。
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