火花 ‐ 又吉 直樹

芥川賞受賞「火花」の話題が沸騰している。
著者の又吉直樹さんについては全く知識が無かった。
NHK教育テレビ「オイコノミア」でお見かけしたけれど、物静かな雰囲気でお笑いの世界の人とのイメージはなかったし、ピースの漫才は全く知らない。

この本を読み始めて直ぐに「苦手な本だな~」と言うのが本音で、読み進むのが億劫になった。
けれど、序盤を過ぎると、いつしか本の中に入り込むことに成功した。
「火花」は僕と一人称で語る漫才師の徳永と先輩芸人神谷との会話、メールで描く青春小説だ。
笑芸に対する思いは、徳永と神谷のかみ合うようですれ違う。
又吉は自分がモデルではないというけれど、私の中では読み進むほどに徳永=又吉の像が出来てしまった。
超まじめな徳永に対して破天荒な神谷はお互いに持たない部分の魅力で惹かれあうのか、メールを交わしあい、酒場で飲み語る。
その様子を傍で聞いている私は、徳永が神谷に感じる魅力に中々同調できないのが、この小説を読んでしんどい所だったのかもしれない。
二人の交わすメールも禅問答の様でピンとこないのだ。
グダグダに崩れた話しかと思えばやたらと緊張させる話しであったり、意味不明で読み返す所がしばしばあった。
以前、林 真理子さんと寂聴さんがこの本は面白いと話していたのだから、ピンとこない私の方が遅れているのだろう。
風景の描写は丁寧で、小説の中でその部分はふわりと肩の力が抜けた。
石神井公園や吉祥寺等々うす覚えのある地名が小説に現実性を持たせて、ますますこれは又吉の自伝ではないのかとさえ思った。
この本は、又吉直樹にしか書けないと言わせる本に仕上がっている。

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