引き算の庭という難題

左足をかばいながら、そろそろと歩いて庭に出ると、昨年の秋に植えた苗や球根が所狭しと押しくらまんじゅう状態になっていた。少し間引いた方が良いのだろうが、どうにも決心がつかない。
背丈のバランスを取る配置をしたつもりではあったが、麦コスモスがひときわ大きく成長し、突出している。ジキタリスやオルレアは、購入すれば高価であるため、つい欲張って多めに植えてしまった。その結果、いまや場所取り合戦の様相を呈している。
隣の苗を抜いてくれ、と訴えるかのように花々が揺れているように見える。
ガーデニング上級者の友人は、いつも「引き算の庭を作るのよ」と語ってくれるが、これが思いのほか難しい。ベテランのガーディナーでさえしみじみと語るのだから、「引き算の庭」がいかに難しいかが分かるというものだ。
室内の無駄なものや引き出しの中の不用品であれば、ためらわずに処分できる。しかし、花となると話は別である。どの花も捨てるには忍びない。それぞれが同じように咲こうとしており、どれを選ぶか、その判断基準が見つからないのだ。同じ背丈、同じような色合いの花々。そこに優劣などあるのだろうか。
とはいえ、何もせずに放置すれば、共倒れの危険性もないとは言えない。毎日庭に出ては、他の場所に移植できないかと空き地を探しているが、庭の面積には限界があるという現実が立ちはだかる。
残った調味料を「ごめんね」と呟きながら流しに捨てるようなわけにはいかない。こんなに種を蒔かなければよかったと、今さらながら後悔しつつ、いまだ思案に暮れている。
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