『神座す山のものがたり』浅田次郎著

時々、浅田次郎の描く「ちょっと不思議な物語」の世界に入り込みたくなる。特に『神座す山の物語』は、そんな気持ちを強くさせる作品だ。

本書の舞台は、奥多摩の霊山・御嶽山。その頂にある村には、太古から神が祀られてきた。そこにある神官屋敷は、浅田次郎の母方の実家である。

浅田は後に「御嶽山は怖かった。神社とお寺なら、僕は圧倒的に神社のほうが怖いです」と語っている。その理由は、「日本の神様は祟りますから」と言い切るほどだ。

本書に登場する、不思議な霊感を持つ少年は、おそらく浅田自身なのだろう。それとわかって「祟ります」と言われると、やはり怖さを感じる。「神社は“人間じゃない何者か”がいるところじゃないですか。それが怖いんです」との言葉が、その恐れを物語っている。

本書は、御嶽山の神官屋敷で、美しい伯母から語られた怪談めいた夜語りをまとめたものだ。ノンフィクションであろうかと想像したり小説用にフィクションが盛り込まれいているだろうと思ったり、ちょっと怖さも感じるが泣ける不思議な感覚に陥る本であった。

どの話も面白かったが、特に「見知らぬ少年」「天井裏の春子」が印象に残った。
浅田次郎の一連の小説の原点がここにあるのだと、改めて納得させられる一冊である。

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