雲の上の高原──四国カルスト台地をゆく

小雨の残る臼杵港よりフェリーに乗り、四国・八幡浜港へ向かう。航行中、窓越しに見る灰色の空と静かな海が、先ほどまでの臼杵の印象となった。旅の後半、いよいよ四国路に入ることとなる。
四国には行きたい場所がある。「四国カルスト台地」がそれである。
四国の中央部、愛媛県と高知県の県境に広がる「四国カルスト台地」は、標高1000メートル前後に位置する、まさに“天空の高原”である。日本三大カルストの一つに数えられ、山口県の秋吉台、福岡市の平尾台と並び、その名を知られている。
ここへ行きたいと思ったのは、カルストの間に延びる道路の写真を見たからである。
標高1000メートルの道路を走りたかったのだ。
四国カルストは、石灰岩が風化や浸食を繰り返して生み出されたカルスト地形を有し、石灰岩の白と、草原の緑が織りなす風景はまるで異国のようである。訪れた日は晴天に恵まれ、視界の先には遠くに石鎚山まで見えた。
代表的なスポットとして「姫鶴平」と「五段高原」がある。姫鶴平は広大な牧草地に牛たちが放牧されており、のどかな風景が広がる。春から秋にかけてはキャンプ場も開設されており、多くのアウトドア愛好者が訪れる。また、五段高原からの眺望はすばらしく、特に夕暮れ時の景色は格別であるらしい。
宿泊地の大洲から車でのアクセスは、一昨年隈研吾の建築を見に行った梼原から行くほうが楽らしいが山道の道幅はやや狭く、くねくねとした道が続き、離合はヒヤヒヤものであったが、到達した先にはそれを補って余りある風景が待っていた。
風の音、鳥の声。何も人工の音が混じることなく、耳に届く。目の前に広がるのは、何もないという贅沢である。
「明日は分からない」と思うからこそ、行けるときに、見られるときに、その地に足を運びたい。そう強く思わせてくれる場所のひとつが、ここ四国カルストである。
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。