雨女と晴れ女と、白山へ向かう

多忙なYさんが、二か月前から楽しみにしていた山代温泉「茶寮 なか尾」へ行く日がついに来た。
彼女の住む地域は前日は小雨が降ったらしい。
道中の紅葉を心待ちにしていた私に、“雨女”いや“嵐を呼ぶ女”としての名声高い彼女は、申し訳なさそうに
「せっかく楽しみにしてるのに、雨になったらどうしよう」
と、すでに弱気である。
だが、大抵の場合、彼女の出番は私の“晴れ女パワー”の前にかき消される。
今回も例外ではなく、当日は穏やかな秋晴れに恵まれた。

白い雪をいただいた白山が姿を現すと、彼女は
「白山の稜線を見るのは初めて」
と、目を輝かせてくれた。
私たちが走れば白山は前に現れ、横に寄り添い、ずっと旅路をともにしてくる。まさに“付き添ってくる山”である。
紅葉は期待通り、いや期待以上であった。

今年は強風が無かったせいか、桜の葉がまだしっかり残り、ひときわ鮮やかに紅く染まっていた。
大津から敦賀へ抜ける国道161号線は、マキノを過ぎるとしだいに山道へ入る。
ブナや欅の大木にまじる紅葉が、その奥行きある美しさを引き立て、つい先日訪れた信州の山々とはまた違う趣を見せていた。
どちらも違って、どちらも良い。まさに大満足である。

目的地の「なか尾」に向かう前に、JA白山へ立ち寄り、鮮魚を見る予定であった。
正式名称は「JA白山 ファーマーズマーケット よらんかいねぇ広場」である。
白山へ向かう山中にありながら、驚くほど鮮魚が豊富で、正直、海辺の市場よりも品揃えが多い。
鮮魚の買い物は姪に任せ、私は野菜コーナーを歩いていた。


すると姪が浮かない顔で戻ってきて、
「売り場の半分が“カニ売り場”になってる…」
との報告である。
なるほど、そういう季節である。
足を運んでみると、越前ガニが一杯と数匹の魚が入った箱が1000円とは破格すぎる値段で積まれていた。
当然、私は飛びつきそうになったが、姪が
「カニがちょっと黒くなってる」
と、ここで拒否権を発動。
魚だけでも安いのだが、あまりに安すぎて理由が分からないと手が出しづらい。
写真に撮っておくべきだったと思いながら、私はお造りを求めて市場を歩いた。
姪は「ホウボウ」を煮付けにすると言って購入していた。
確かに身離れも良く、美味しかった。
その一皿のために、姪は朝から小芋を炊き、午後は銀杏の殻をむき、松葉に刺して準備していた。
器に盛られた料理は見た目にも美しく、なかなかの出来映えであった。
お造りを買って終わりの私とは違い、丁寧に料理を仕上げる姪の姿に、少し驚かされた。

その後は、鶴来から山代温泉まで、ゆっくりと白山に見守られながら車を走らせた。
山も紅葉も天気も、そして人も、すべてが良き一日にしてくれたのである。
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