幻のシェーカーボックスを求めて

かなり以前、能登の震災で被害に遭った七尾市一本杉通の小さなギャラリーで、心惹かれる美しい木の箱を見かけたことがある。手に取って眺めるだけで、その佇まいに魅了された。しかし、気軽に購入できるような値段ではなく、結局その場を後にした。
その後、その箱は「シェーカーボックス」であることを知った。蓋付きの木の箱は程よい楕円形で、「スワローテイル」と呼ばれる継ぎ手部分が特徴的であった。
あるきっかけで、井藤氏が松本で「LABORATORIO(ラボラトリオ)」というギャラリーカフェを手がけ、その1階「the BOX SHOP」でシェーカーボックスを販売していると分かった。
この情報を得て以来、松本を訪れたいという思いが募っていた。そして、ようやくその機会を得て、期待に胸を膨らませながらLABORATORIOへと足を運んだ。
昭和8年に建てられた薬局の建物を活かした趣のある店舗を前にし、まずはビルの外観を確認する。そして意を決して近づいたところ、入り口に思いもよらぬ張り紙が目に飛び込んできた。
「今年の3月2日(日)を持ちまして、ラボラトリオ1F の the BOX SHOP を一旦クローズすることとなりました。」
今回の旅の最大の目的が、この張り紙によって崩れ去った。あれほど公式サイトをチェックしていたのに、閉店に気づかなかった自分を悔やむばかりである。
それでも諦めきれず、2階のカフェとショップを訪ねてみることにした。急な階段を登ると、そこには珈琲の香りが漂い、小さなショップが併設されていた。しかし、シェーカーボックスの姿はどこにもなかった。
最後の望みをかけて店員に尋ねると、「体調を崩しているため、しばらく販売を中止しています」とのことだった。ここまで来て、手に取ることすら叶わないとは、なんとも縁のないものだ。
さらに、井藤氏が手がけた信毎メディアガーデン2階の「MARKT+(マルクト・プルス)」にも足を運んでみたが、そこにもシェーカーボックスの姿はなかった。
期待を胸に挑んだ今回の旅。しかし、まさかの事態により、新規開拓の旅は手厳しい始まりとなった。
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