雪虫の舞う頃、花友を訪ねて

旭川にて花友の庭を訪問した。
初めてお会いしたのはいつのことだったかと自らのブログを遡ると、2010年7月の記録が出てきた。トップの写真はその時のもの。
すでに十五年の歳月が流れている。その間、季節を変えて十度ほどは訪ねているかもしれない。

十五年の歳月の中には、互いに家族の介護に追われた時期も重なっていた。
彼女は昨年までにご両親を相次いで見送り、その後、庭への関心が急速に薄れてしまったという。私より一回り以上若い彼女であるが、長年にわたり別々の形で両親の介護を担ってきたのだから、その日々は並大抵ではなかったのだろう。

かつて彼女は「夫が定年になったらイングリッシュガーデンを訪ねたい。」と語っていた。しかし定年前にお母さまが倒れ、海外旅行どころではなくなってしまったという。
「昨年は足立美術館に行きました。」と楽しそうに話していたが、今年はいよいよ念願の海外旅行に出かけたそうだ。てっきりイギリスかと思いきや、「イタリア」だったという。
「あら、イングリッシュガーデンではなかったの?」と尋ねると、「もう、庭への関心は薄れてしまったの」との答えが返ってきた。庭以外のことに新しい興味が芽生え、別の世界を見ているのだという。
かつては多くのガーデン誌に紹介され、全国からの客が訪れた庭主とは思えぬ言葉であったが、十五年という年月はそうした変化をもたらすものなのだろう。その変化が、私にはむしろ好ましく感じられた。

数日前、旭川では雪虫が飛んだと聞いた。彼女の庭は紅葉の始まりを迎え、冬支度に追われていた。

「寒いから庭でお茶をするのは無理でしょう」としきりに気にかけてくれたが、私たちにはちょうど良い気候で、風もなく、庭で過ごすお茶の時間はまさに至福のひとときであった。

庭には多くの構造物があり、手入れの行き届いた佇まいが経年の趣を添えていた。「大きな木やコニファーもたくさん切りました」とのことだったが、全体の景観はしっくりと落ち着いており、失われた三本のコニファーの記憶さえ蘇らなかった。


庭の冬支度が終われば、年内にもう一度海外へ出かける予定だという。私のブログを読んで旅先の想像していたそうなので、話題は自然と庭を離れ、旅の話に広がった。

およそ二年ぶりの再会であったが、顔を合わせれば十五年前と変わらぬ気持ちに戻り、数時間があっという間に過ぎていった。心から楽しい時間であった。

旭川と私のご縁を作ったのは、この写真の家人作「ぶどうのスティック」であった。懐かしい。

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