石川・那谷寺 紅に染まる古刹を歩く

紅葉の名所はいくつもある。京都寺院の紅葉はその代表格で、連日多くの観光客で賑わっている。名高い紅葉ではあるのだが、混雑を思うと足が遠のいてしまう。いつの間にか、車を走らせながら山中の紅葉を眺める方にすっかり慣れてしまった。
ところが、思いもかけず石川県小松市・那谷寺の紅葉を観る機会に恵まれた。

那谷寺は、開創1300年を超える白山信仰の古刹で、自然を活かした広々とした境内には、国指定名勝「奇岩遊仙境」をはじめ、重要文化財の建造物が点在している。
「白生山」の額が掲げられた古い山門をくぐると、苔むした参道の先に紅葉が陽射しを受けてちらちらと揺れ始めた。庭にある書院の屋根に散る紅葉の美しさといったら、声もなく見入ってしまう。屋根も、苔の庭も、どこを見ても紅葉の美しさが際立っていた。



同行の友人たちも「天気に恵まれ、素晴らしい紅葉が見られた」と大喜びであった。ふだんは足が痛い、腰が痛いと言っているのも忘れ、「奇岩遊仙境」に驚きながら、急な階段を嬉々として登り、大悲閣(本殿)まで一息に到達した。本殿の本尊・十一面千手観世音菩薩は、これまで見たこともないほどの気品で鎮座しており、木曽檜の寄せ木造りで高さ7.8メートルと伝わる。

境内はよく整備されていて、案内に沿って歩けば見どころを余すことなく巡れるようになっている。上り下りの多い階段のたびに景色が変わり、思いがけない角度から紅葉が姿を現す。気づけば夢中で歩き続けていた。およそ一時間半もあれば境内をひと巡りできるが、その間、紅葉は絶えず表情を変え、訪れる者を飽かせない。


今年の紅葉はこれが見納めになるだろう。
しかし、那谷寺の紅葉に出会えたおかげで、三年分ほどの福を手に入れたような気分である。
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