懐かしき味と友に会う―大分・駅前滞在記

今回の旅では、大分駅に隣接する「JR九州ホテル ブラッサム大分」に宿泊することにした。
この宿を選んだきっかけは、つい先月、近所のスーパーで出会った友人の助言である。彼女は大分市の出身で、大分駅が大きく様変わりしたと教えてくれた。私は普段、電車を使う機会がほとんどなく、駅についての知識も乏しかったが、彼女の話を聞いて興味が湧き、宿泊を即決したのである。
駅に直結しているだけあり、周囲の利便性は申し分ない。わざわざデパートまで足を運ばずとも、大分の名産品が一通り揃う仕組みとなっていた。
姪とともに売り場を巡り、懐かしいお菓子や漬物を見て回る時間は、まるで子ども時代に戻ったかのようであった。特に二人が心惹かれたのが、「吉四六(きっちょむ)漬」という漬物である。新鮮な野菜をもろみ醤油に漬け込んだこの一品は、かつて私たちのお気に入りであった。
しかし、店舗の方によると、吉四六漬は2020年、コロナ禍が始まった年に生産が中止されたとのことである。調べてみたところ、同年7月の朝日新聞には次のような記載があった。
「大分県民に長く愛されてきた漬物『吉四六(きっちょむ)漬』が9月、生産販売を終了する。材料となる野菜生産者の減少や高齢化、減塩ブームによる売り上げ減が大きな要因という。」
生産販売を担っていたのはJA玖珠九重であった。おそらく観光客の減少も、存続に追い打ちをかけたのだろう。時代の移り変わりを、こうした小さな別れからも感じる。
夕食には、駅ビル内にある回転寿司店へ、友人や家族と連れ立って出かけた。店内は空いており、注文すればすぐに料理が運ばれてくる。ネタはどれも大ぶりで、新鮮そのものであった。
ただし「ウニ」や「イクラ」といった高級ネタは見当たらず、その分、海老や貝類の種類が豊富であった。富山の海の幸とはまた異なる味わいを堪能し、お腹も心も満たされて大分の味を堪能した。
食後はホテルのロビーで、積もる話に花を咲かせた。夜が更けるのも忘れ、互いの近況を語り合いながら、「また元気で会おう」と再会を誓い、別れを告げた。
今回の旅のもうひとつの目的は、懐かしい味に出会い、そして何より、大切な人々の顔を見ることでもあった。
翌朝は小雨が降り、少し肌寒い朝となったが、姪に誘われ、大分駅から続く商店街のアーケードを歩いた。時刻が早かったため人通りは少なかったが、懐かしい店が目に飛び込んでくる。文具店、眼鏡店、生地屋等々いずれも私の同級生が営む店である。まだ営業を続けていることに安堵し、「よかったね」と姪と言葉を交わしながら歩いた。
雨の中、次の目的地である臼杵へと向かう足取りは、どこか名残惜しくもあった。
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