信州果物旅:季節の恵み

9月の信州行は、秋の果物シーズンに誘われての旅だった。
最初の目的地は、富山県の呉羽丘陵。 ここは幸水梨の発祥の地で、80年以上の歴史がある。私が富山に住んでいた半世紀ほど前、「梨」と言えば鳥取の二十世紀梨だと思い込んでいた所に、初めて出会った呉羽の幸水は衝撃的だった。二十世紀梨のきりっとした味に比べて、幸水は蜜のように甘い梨だった。
旅行初日に懐かしい呉羽の梨農家に一番に寄った。販売は9時半からと書かれていたが、到着した10時過ぎには既に完売寸前だった。一級品は残っていたが、わざわざ農園に行くのはB級品を求めるからである。 2泊の旅に持って行こうとしたが、農家の方は「それは一寸…」と難色を示した。「B級品は発送も出来ない」という返事だった。
結局自分でビニール袋から出して、箱に詰め、新聞紙で固定して運ぶことに。 梨は上下逆にして並べ、日差しが当たらないように工夫して運んだ。大事に育てられた梨だからこそ、扱いにも注意が必要なのだと感じた。
運送は大変だったけれど、その値打ちは十分な美味しい梨だった。
交渉や詰込みに気を取られて写真は写せなかった。

次に訪れたのは、小布施の林檎園。 真っ赤な紅玉林檎がたわわに実る果樹園は美しい光景だったが、ちょうど端境期で販売できる林檎はまだなかった。 紅玉の林檎は10月中旬まで樹上で完熟させるそうだ。林檎の樹の下には葉がびっしりと敷かれていた。 林檎の樹から落とした葉たちだ。「葉を取らないと、林檎に日光が当たらず、十分に熟さない」という。 林檎作りの重労働を垣間見た。

葉っぱを落とす時に落ちた未熟な林檎を、農園の方がいくつか分けてくれた。追熟しない林檎だと言われたが、家に帰って焼きリンゴにしたら、予想以上に美味しかった
娘が熱々のリンゴにアイスクリームを添えてくれたからだろうか。

旅の最後は、塩尻の桔梗が原ブドウ園へ。 夕方にさしかけていたためか品薄だったが、巨峰は驚くほどお手頃な価格で手に入れた。名前も知らない品種の葡萄が多く並んでいたが、それらはひと房ずつの価格が立派過ぎた。
巨峰は一世を風靡した葡萄で最近は種なしだ。口いっぱいに頬張って食べると、私世代ならどっぷりと幸せ感に浸れる葡萄だ
トランクを果物でいっぱいにして大満足で帰路に着いた。

しかし、帰り道では小牧一宮間で工事渋滞に巻き込まれ、9kmの距離を通過するのに90分以上かかった。
これで旅の疲れが一気に押し寄せたが、たくさんの想い出と美味しい果物との出会いで、今回の旅も充実したものになった。

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