16年目の春、白く香る日

昨日、5月20日は我が家のきなこの16歳の誕生日である。人の年齢では八十路、ついに我が身に追いついた。来年は追い越してゆくのだろう。顔つきにも年齢なりの味わいが滲み、病院通いも増えてきた。老いというものが、じわりと日常に溶け込んできた。もはや人間と少しも変わらない老いの道を歩んでいる。
ふと、胸に過ることがある。
自らの意志よりも、飼い主の意思に委ねる生は、はたして安らかなるものか。
けれど、それを問いとすることさえ、すでに人間の側の傲慢なのかもしれないが。
今年は、庭のエゴの木が例年にも増して見事に咲いた。枝という枝を覆い尽くすように白い小花が咲き誇り、朝一番に掃いてもすぐにまた落花で地面が白く染まる。どうやら雨が近づいているらしく、これ以上の風や雨で花が散ってしまうのが惜しまれる。せめてあと一週間ほど、咲き続けてほしいと願わずにはいられない。
花の季節も例年よりいくぶん早くやってきたように感じている。昨日のように5月にもかかわらず気温が30℃を超えるような日が訪れると、花は一気に命を縮めてしまう。まさに、花の命は短いものである。
家人は朝から一日中、花の手入れに余念がない。丹精込めて世話をしたおかげで、今年は例年以上に美しいバラが咲いた。また、エゴの花も驚くほどに多く咲き、庭全体が白い霞に包まれたような趣を見せている。
昨日は、そんな美しい庭とともに、きなこの誕生日を迎えることができた。花々に囲まれて、きなこの穏やかな老いと誕生日という日を祝いたいと思う。
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