薄焼き玉子と人の縁

薄焼き玉子が苦手だ。
ちらしずしの上を飾るフワッと美しい錦糸玉子に憧れているけれど、思うようにはいかない。
夏になると冷麺や素麺にも使うので錦糸玉子の出番が多い。
いつも気合を入れて、緊張して錦糸ではない薄焼き玉子を焼いている。

京都に住む姪は私の長姉の娘で私とは3才しか年が変わらないから、妹的な存在だけれど、彼女は京都で小さな食料品店の女将さんになったので、忙しくて中々会えなかった。
昨年、高齢化に伴い店を閉めたけれど、事後の手続きや、家屋の建て替えに追われて、多忙を極めていた。

その姪が来ると言うので、冷麺を作ろうと朝から錦糸玉子を焼いた。いつもより上手く焼けたかもしれない。
昼前に来た姪と、夕方まで姉母のアルバムを開いて、家族の想い出話しをした。

「お前は、満員電車に乗っても自分の座る席はあると思っているやろう」と言ったのは私の兄だ。
10代の頃の話だ。
何故そう言われたのか思い出せないけれど、言われた言葉は忘れてない。
人の縁に恵まれて、何時も誰かに助けられてきた。
そんな時に「電車は、空席があったよ」と兄に誇りたくなったものだ。
その兄は今年3月に突然死去した。
私に一言も残してくれず、葬儀も教えてもらえずに兄と別れた。
今でも胸がキリキリと痛む。
忘れようとしたけれど、姪と思いっきり兄の話をしなければ兄の死は受け入れがたい事だった。
兄の死を友人知人に知らせてお悔やみを頂くと悲しみが募るから、伝える事も出来なかった。
今Blogを読まれて、さぞ驚かれたと思うけれど、どうぞそのまま触れないで欲しい。
涙の堰が切れると、自分で収集できませんので。

今まで咲いたことのないティツリーの白い花が咲いた。
姪をもてなす薄焼き玉子が、上手に焼けた。
兄を偲んだ。
思う事、言いたい事、ここに書いてはいけない事を浄化させた。
生きるために昨日は大事な一日だった。

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