ダンスが彼女を救った – 友人とのエーゲ海クルージングの思い出

ダンスパーティに招待されて出掛けた。友人はダンスを30年近く続けている。
背中をピンと伸ばす姿勢はダンスの賜物か。

彼女は、50代の半ばでご主人を失くした。そして、受け入れがたい事実から家に籠ってしまった。
桜が咲いたと言って引っ張り出しても、うつろな様子が続いていた。どうしようもなく沈んだ日々だった。

そんな時に、少し荒治療だったけれど、エーゲ海のクルージングに彼女を引っ張り出した。
ギリシャのアテネからトルコ、イスタンブールまでいっきに航海して、エーゲ海の島々に寄港しながらアテネまで戻って来る1週間のクルージングだ。
ロイヤルオリンピッククルーズ社の「トリトン号」(14,000トン)日本人は私達2人だけだった。

彼女が立ち直ったのは、クルージング中に夜毎開催されるダンスタイムだった。その頃、私は勿論彼女も全く踊れない、壁の花(シミ?)状態だった。
昼間はヨボヨボと歩いている老人がダンスタイムは別人のように踊っているのを見て驚いたものだ。

「帰ったら、ダンスを始めるわ」と言った彼女は帰国後すぐにNHKのダンス教室に通い始めた。
あれから30年、彼女は80才の半ばを越えて、益々元気に踊っている。
ペアーを組む先生の個人レッスンの一期生で、現在海外の競技大会に出場する先生のただ一人の生徒になった。

ダンスが彼女の人生を変え、再び明るい未来をもたらした。今、彼女の姿勢や元気さは、まさにその証である。

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