落語が頭の上を通り過ぎた日 ― しがらくご『三枚起請』

二か月ぶりの「しがらくご」が、浜大津のスカイプラザ浜大津7階スタジオで開催された。
世界中に重苦しいニュースが流れる中、木戸銭が500円値上げされたこともあり、客足への影響が気になっていた。
会場に入ると、入り口付近がやけに静かだ。
思わず「えらく静かですねー」と声をかけると、「そうですねん」と返ってきた。
「えっ、本当に?」と少し驚く。
落語家さん四人も、どこか元気がないように見えた。
この日の演目はいずれも古典落語。
しかし正直に言うと、どれもあまり楽しめなかった。
噺が頭の上を通り過ぎていくようで、こちらに落ちてこない感覚だった。
トリは紅雀さんの「三枚起請」。
大工の棟梁、若旦那、経師屋、そして花魁・喜瀬川――四人の人物を声色や表情を変えて演じ分ける熱演であった。
それでも、どうにも噺の世界に入り込めない。
遊女が三人の男それぞれに「私だけの男」と約束し、三通の起請文を書く。
その嘘が一度に暴かれる場面へと話は進む。
「起請文に嘘を書くと熊野のカラスが三羽死ぬと言うだろう」
そう言われた遊女は、開き直ってこう返す。
「私は世界中のカラスを殺したいんだよ」
それを聞いた男が問う。
「世界中のカラスを殺してどうしたいんだ」
遊女は答える。
「朝寝がしたいんだよ」
――これが落ちである。
しかし、この「朝寝がしたいんだよ」という一言が、どうにも腑に落ちない。
こんなに落ちが理解できない落語は初めてだった。
どうやらこの演目は、かなり通向けのものらしい。
「起請を何枚も書くと烏が死ぬ」という言い回しには、熊野牛王宝印という宗教的背景があり、演者と客がそれを共有していないと噺の深みが伝わりにくいのだろう。
さらに、「三千世界の鴉を殺し、主と朝寝がしてみたい」という都都逸を踏まえているともいう。
ここまでの知識があって、ようやく腑に落ちる噺なのかもしれない。
そう考えると、今日は少し分が悪かった。
理解が追いつかないまま、どこか置いていかれたような気持ちで会場を後にした。
久しぶりの落語に期待していただけに、少しがっかりした夕方であった。

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