情熱と哀愁—アストロリコ四重奏のタンゴ・ナイト
夕方の雨が寒さを連れてきた。 コートの襟を掻き合わせ、冬の気配を感じる夜に旧大津市公会堂の地下「bochibochi」へ向かった。
19時ぴったりに始まったステージの最初の曲は「エル・チョクロ」であった。
「ラ・クンパルシータ」と並んで最も有名なタンゴ曲だ。「リベルタンゴ」かと期待したけれど。
私のタンゴとの出会いは「コンチネンタルタンゴ」の「アルフレッド・ハウゼ」のレコードから始まった。 その後、大阪でアルゼンチンタンゴのステージを目にしてからその魅力に引き込まれた。
最近ではバンドネオン奏者の紹介もあり、コンサートのお知らせを頂くようになって、いっきに距離が縮まった。
冬の気配がする寒い夜に情熱と哀愁のアルゼンチンタンゴは身に沁みる。
一曲ごとに万雷の拍手が沸き起こる。タンゴの情熱で外の寒さを忘れた。
アストロリコの四重奏は、ピアノ、バンドネオン、コントラバス、ヴァイオリンである。
中でも「夜のプラットホーム」という昭和14年の楽曲をタンゴ調で演奏した際、最初の汽笛をバンドネオンが演奏すると、蒸気機関車を知る世代にとっては懐かしさが一気にこみあげた。曲はコントラバスの低いブレーキ音で終わった。その時、暗いプラットホームの映像が浮かんだ。
この組み合わせの四重奏ではこういう演奏の仕方もあるのだと感心した。
このような趣向の曲は、小さな会場だからこそ特別に感じるものだ。観客との距離が近く、音楽に満ちた空間でこそ、タンゴの持つ情熱と哀愁が最も表れる。
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