昼の祇園JTN、久々に浸るシャンソンの深み

今年は脚を痛めてしまい、通院に追われる日々が続いていたこともあって、祇園へ足を運ぶ回数がめっきり減っていた。そんな折、中村扶実さんからお誘いをいただき、久しぶりに祇園のJTNへ出掛けた。

シャンソンをじっくり堪能するのは本当に久しぶりで、胸の奥がフワッと高鳴るような気分であった。
この日の出演は、中村扶実、波多野まき、前田秀子の三名。中村さん以外は初めてお会いする歌手であったが、むしろそれが楽しみでもあった。シャンソンというのは、歌手の解釈と歌い方ひとつでまったく別の曲に聴こえるほど奥深いもので、その“違い”にこそ魅力がある。

若手の波多野まきさんは、この日のステージ進行をほとんど一人で務めていた。力のある声に加えて、舞台を回すエネルギーも相当なもので、2部の最後にはなんと演歌を数曲、全力で歌い切った。
以前の私なら「シャンソンに演歌?」と違和感を覚えたはずなのだが、彼女の熱唱は汗が飛び散るほどの迫力で、若さの勢いをぶつけるような真っ直ぐさが実に心地よかった。
「朝日のあたる家(朝日楼)」は、私はちあきなおみの歌唱で馴染みがある。そして「ミロール」は言わずと知れたエディット・ピアフの代表曲。いずれも娼婦が主人公の重たい歌であるが、大曲だけに、歌手の力量がはっきりと表れる。
前田秀子さんは、JTNのステージはこの日が初めてとのこと。
少し低めの声であるが、ただものではない雰囲気をまとっている。抑えた声の奥に潜ませた情感がじわりと滲み出て、観客を思わず振り向かせてしまう実力の持ち主である。次回何処かで又聞く機会がったらと楽しみになった。
そして中村扶実さん。
久しぶりにお会いする中村さんは長い髪をバッサリと切られ、緩いカールが美しいヘアースタイルだった。
とてもお似合いで、ますます輝きを増していた。
バルバラの曲を中心に歌う方だが、この日は少し趣向を変えた選曲だった。「パダン・パダン」(エディット・ピアフ)、「黒い鷲」(バルバラ)では、透き通る高音が美しく、会場の空気が澄み切っていくようであった。
私はシャンソンの中でも「ミロール」や「黒い鷲」が特に好きで、この日のセットリストに含まれていたことは、思いがけなく嬉しかった。
久しぶりのシャンソン。
やはり、生で聴く歌声の力というものは特別である。胸の奥のどこか、普段は触れられない部分をそっと撫でられるような、不思議な余韻が残る。
またこの余韻に浸りに、祇園へ足を運びたいと思うのである。
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