おもかげ – 浅田次郎

久しぶりに浅田次郎の本を読んだ。
浅田作品を最初に読んだのは直木賞を受賞した鉄道員(ぽっぽや) だった。
現実と非現実が交差する不思議な本で、ファンタジーと言われている。
読みながら自分がフワフワ浮くような感覚があった。



けれど、次々に浅田作品にのめり込むのは、掘っても掘りつくせない人の心の闇にある水に触れるからではないだろうか。

浅田は地下鉄ものが好きだ。
過去には「地下鉄に乗って」「鉄道員」「天切り松 闇がたり 1 闇の花道」「椿山課長の七日間」等がある。
読み進むうちにこれ等の小説のどこかの場面を思い出すことがあった。
けれども、飽きもせず隙間の時間をつなぎ合わせて寸暇を惜しんで読了した。
地中を走る電車には、地上を走る電車とはちがう雰囲気を、若い頃には私も感じた事がある。
外の明るい景色が見えない代わりに、窓には自分の顔が映る。
周りにいる人たちの顔も映る。
その顔を眺めていると、見ず知らずのその人たちの背景を想像することもあった。

浅田小説を読んでいる数日間は心が穏やかになる。
人はここまで人を思い、人生を味わえるのか。
主人公の人生をなぞりながら、自分の人生を味わっているような本だった。
お奨めです。

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