ドナウの旅人、錦繍 、蛍川・泥の河 ‐ 宮本 輝

宮本 輝の本を初めて読んだのは「ドナウの旅人」だった。
「錦繍」を書店で手にとった時に、急にドナウの旅人を思い出した。

ドナウ川がドイツから黒海に注ぐまでをふた組みの男女が旅をする。
離婚を決意し、年下の男性とドナウに沿って旅をしているという手紙を受け取った娘が母を追いかけて旅をする。
詳細は覚えてないけれど、旅行記のような内容と東欧の暗い街と年下の男性と旅をする母親、その娘と恋人の人間関係が複雑に絡んで、不思議さと不気味さを感じた。

その本を読んで以来、宮本輝の本は書店で見かければ買っている。
後年、現実のドナウ川を見たときも頭の中に「ドナウの旅人」は蘇った。

どこか女々しくて繊細な宮本の印象は「流転の海」を読んだ時に変わった。
流転の海の続編を探すために書店で宮本コーナーに行くのがきっかけで今回の「錦繍」に出会った。
「錦繍」は書簡体で書かれている。
主人公の勝沼亜紀は錦秋を見ようと蔵王のゴンドラリフトに乗り、そこで別れた夫の有馬靖明に10年ぶりに再会する。
靖明はホステスの無理心中で生き残った。
亜紀はその理由を聞かず、靖明はその理由を語らず、20代の二人は別れた。
靖明を自分の会社の跡取りにと考えていた亜紀の父は「競走馬で例えれば前足をポキンと折った」という言葉で靖明を切り捨てた。
10年後に偶然出会った二人は往復書簡で当時の思いを語り合うことをはじめる。
それにより、それぞれの今の状態を受け入れ、改めて新しい生活に踏み出していくという物語である。

宮本輝は私と同世代、「錦繍」の中の亜紀は当時の宮本輝と同世代。
38才で「錦繍」の往復書簡の中で語られる優雅な世界を書いた宮本輝の想像力に自分の年齢を重ねると、作家の力にひれ伏すしかない。
32才で「蛍川・泥の河」を書き、太宰治賞を受けている。
流転の海に重なる泥の河で育った宮本輝の世界は尽きることがない。

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