アルプスの見える町・松本散策

松本は、アルプスの見える町。何度訪れても、この町の空気感が好きだ。

この日は晴天に恵まれ、遠く美ヶ原のテレビ塔まで見えていた。女鳥羽川まで歩くと、「ああ、松本に来たなあ」と実感する。私の故郷ではないのに、懐かしさを感じさせる不思議な町だ。

午後4時までは歩行者天国となる中町通りでは、多くの人が思い思いにぶらぶらと歩いていた。人気の蕎麦屋や洋食店の前には長い行列ができ、今ではそれが当たり前の風景になっている。


ここは、私のお気に入り「時代遅れの洋食屋 おきな堂」である。
土曜日のランチが40分待ちなら楽勝かと思ったけれど、午後2時前の事である。

今回は友人と一緒だったため、いくつかの店舗をチョイスしながらガイド役を引き受けた。自分の好きな店ではつい熱弁をふるい、爆笑ツアーになった。

「陶片木」では、以前心を惹かれた藍水の湯呑を探した。初めて藍水の器を見たのは、友人の家だった。楚々としたデザインが可愛らしく、お茶を飲むのも忘れて見とれてしまったほどだ。友人も「陶片木」にはよく来るが、彼女が持っていた湯呑はここで買ったものではなかったらしい。

店内には、藍水の器のほかにも魅力的な作品が並んでいた。藍色の濃淡が美しい大皿や、細やかな筆致で描かれた小鉢など、一つ一つ手に取って眺めるたびに、職人の技の奥深さを感じる。店主が、作家ごとのこだわりや制作背景について丁寧に語っているのが聴こえて来た。話を聞きながら、器がただの道具ではなく、使う人の生活に寄り添う特別な存在であることを改めて実感した。

この日、湯呑は売り切れだった。店主によると、とても人気があり、すぐになくなってしまうという。ネットでも買えるが、「陶片木」に展示されている時の湯呑が好きなのだ。こういうものは、思い通りに買えないほうがかえって楽しいのかもしれない。次回訪れた時も、「藍水の湯呑、ありますか?」と聞くのを楽しみにしている。

松本は小さな町で、見どころは歩いて回れる距離にある。3時間もあれば十分だろう。

夕飯までの時間が余ったので、地元のスーパー「つるや」に立ち寄り、米価をチェックすることにした。しかし、米売り場は空っぽだった。

普段、スーパーの米売り場を気にすることはあまりない。しかし、いざ空っぽになっているのを見ると、なんとも言えない虚無感に襲われた。お米は、日本の食卓に欠かせないもの。どんな時でも当たり前のように棚に並んでいるはずのものが、ここにはなかった。

「こんなこともあるんだな」

友人と顔を見合わせながら、しばらく売り場の前で立ち尽くした。店内を見回すと、他の食料品は普通に並んでいる。それなのに、お米だけがないという現実が、妙に非日常的で、旅の気分を一瞬で現実へと引き戻した。
そんな、ちょっと不思議な感覚を残した松本の一日だった。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

skogBLOG内の記事検索

カテゴリー

過去の記事

旅行関連の情報収集

ブログランキングで旅行関連のブログをご覧いただけます!

ガーデニングの情報収集

ブログランキングでガーデニング関連の情報を収集できます!
ページ上部へ戻る