旅ゆけばー鑑賞編・十和田市現代美術館

青森県立美術館は時間足らずで心を残してしまった。
翌日は朝から時間の余裕をもって「十和田現代美術館」に向かった。
青森のホテルからは国道40号線を利用した。
空気が澄んで離合する車は少なく気持ちのいい道だ。
途中、右手に八甲田が見えた。
私の世代は八甲田=新田次郎と繋がって思い出す。
まだ雪が残っていた。
十和田市現代美術館には会いたい老婦人の像がある。
オーストラリア人のロン・ミュエクの巨大な彫刻作品「スタンディング・ウーマン」だ。
肌、皺、血管、髪の毛にいたるまで、人間の身体の微細な部分を克明に再現しながら、スケールにおいては大胆な変化を加えた作品を発表しいる。
第1展示室なので入館すると一番に出迎えてくれる。
4mの身長を持つ非現実的な彼女だけれど、出会った瞬間に親しみを覚えた。
モデルはない。
コンピューターで膨大な写真から作り出したと言われている。
細かく見て行くと、指輪が太くなった指に食い込んでいる。
使い込んだ靴を履くむくんだ足
着慣れた普段着のワンピースは老いた体の線を洋服のしわが語る。
そして一番惹きつけられたのはその眼差しだ。
彼女と対峙すると思いがけない感情が湧いた。
単に彫刻としてあるだけでなく、彼女を通してその背景にある人生、自分の人生を喚起させられた。
外見は全く違うけれど内面は私なのではないだろうか。
多分年齢的には私と同じか少し若いかもしれない。
長い人生は激流を下り穏やかな流れの中にある。
そしてもうすぐ大海にたどり着く。
彼女のまなざしは大海を見ているようだ。
十和田市現代美術館の大きな特徴は展示室が独立した部屋になっている事だ。
ひとつの部屋にひとつの作品が展示されていて、その間はガラスの廊下で結ばれている。
十和田市現代美術館は「Arts Towada」の一環として造られているので、展示スペースに大きなガラスの開口があり、アート作品が街に対して展示されているかのような開放的な構成となっている。
作品は、美術館の展示室の中だけでなく、中庭、屋上、階段室など、敷地内の様々な場所に配されているので、気が付かないで飛ばしてしまっては勿体ない。
受付で無料音声ガイドを貸してくれる。
それを聴きながら美術館を回ると、心豊かに過ごしていると感じられる。
良いひと時だ。
「Arts Towada」とは、官庁通り全体をひとつの美術館に見立て、多彩なアート作品を町中に点在させている事。を指している。
ストリートファニチャーやベンチとして使える彫刻作品などで日常にアートが溶け込むような仕掛けがされている。
こんな町で育った子供の将来を見てみたい。
青森県のアートで町おこしは、想定外の観光客を呼び込んで大成功をしているそうだ。
おまけ
現代美術館には不思議な建物があった。
建物―ブエノスアイレス レアンドロ・エルリッヒ作
解説はこちらをご覧ください。
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