三方五湖の伏流水が育む極上の鰻 ――小浜「源与門」にて味わう至福の一膳

お盆の墓参りの帰り道、三方五湖近くの鰻の名店「源与門」に立ち寄った。
店先には人が溢れ、待ち時間は一時間と表示されていた。真夏の太陽の下、日陰もなく、さすがにこの日は諦めた。
平日には入れた経験があったので、油断していたのである。しかし昨今はますます人気が高まり、容易には席が取れぬ店となったようだ。

そして今回――。
おにゅう峠からの帰り道、「源与門の鰻を食べて帰ろう」と話はまとまっていた。
お盆のリベンジである。もっとも三連休の中日ゆえ、混雑は覚悟の上である。
この日はここを最終目的地と定め、何時間でも待つ覚悟で臨んだ。
おにゅう峠を転がるように下り、「源与門」に到着したのは昼下がり。
番号札は三十九番、表示された待ち時間は四十分であった。
午後の陽射しは暑からず寒からず、外で待つにも心地よい気候である。

店先には大きな柚子の木があり、今にも落ちそうな実を見上げながら時間を過ごした。
「柚子が先に落ちるか、順番が先に来るか」そんな小さな楽しみを胸に待つ四十分。
やがて呼び入れられたが、席についてから料理が出てくるまでの方が長く感じられた。
辺りには香ばしく鰻を焼く匂いが立ちこめ、空腹を刺激する。腹の虫はとうに騒ぎ出していた。
「お待たせしました。」
そう声をかけられ、うな丼の蓋を取った瞬間、ふわりと立ちのぼる香ばしい匂いが鼻を突いた。
鰻は蒸さずに直火で焼かれており、皮は香ばしく、身はふっくらとしている。
炊きたてのご飯が熱々で、鰻の旨味を一層引き立てている。
「うわっ、うわっ、ふうーふうー」と声を上げながら頬張る。
三方五湖で育った鰻は、表面にほのかな青味が差し、尾尻が太く長く、口先が細く尖っているのが特徴である。
源与門の公式サイトによれば、淡水と海水が入り混じる水月湖近辺の泥底に生息する沙蚕(ゴカイ)を好んで食べるため、口細になるのだという。
さらに、源与門の裏山・雲母山(きらやま)から湧く伏流水を「雲母山水(きらさんすい)」と名付け、今もその清水で鰻を活かしている。
この水こそが、源与門の鰻を他店と一線を画す存在にしているのだろう。
熱々のご飯の美味しさに箸が止まらず、ハフハフと夢中で食べ進めたが、丼の最後の一口は満腹との戦いであった。
到着から店を出るまで、実に二時間。食事そのものは二十分ほどで終わったが、残りの時間はただひたすらに待つのみである。
これから訪れる方へ忠告しておきたい。
この店は「待つことを楽しむ」鰻屋である。
本を持参するか、会話の弾む仲間と出かけるのがよいだろう。
それでもなお、待つ価値がある。
源与門の鰻は、三方五湖の恵みと人の手が生み出した至高の味である。
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