旅に出たなら何食べるー四国三郎よしのがわ・松山

松山の夜は、雲の上ミュージアムの近くにある「四国三郎よしのがわ」という居酒屋を予約した。繁華街の中心に位置し、愛媛の魚が美味しく頂けるとの口コミを頼りに選んだ店である。
予約の電話を入れると、「最初にお出しする一品を決めてください」と告げられた。メニューも見ずに選ぶのかと一瞬戸惑ったが、事前に読んでいた口コミに同様の内容が記されていたのを思い出し、「とりあえずお造りの盛り合わせを」と伝えた。
縄のれんをくぐって入店すると、若いスタッフの元気な挨拶が迎えてくれた。店内は既に賑わっており、まだ午後6時前というのに、客でほぼ満席の状態である。どうやらここも評判どおりの繁盛店らしい。
案内された席は「小上がり」であった。これには少々戸惑った。椅子に座れない私にとって、畳に座るのは難儀である。座布団を重ねてみたものの安定が悪く、姿勢を整えるのに苦労した。1枚の座布団であれこれ試すも快適とは言いがたく、結局は足を投げ出して壁にもたれて座ることにした。しかしその姿勢ではテーブルが遠く、手が届かない。もう、なるようになるさと腹を括るしかなかった。
注文しておいたお造りの盛り合わせが運ばれてくると、まるで美術品のように美しく盛られており、思わず「美味しそう」と声が漏れる。その鮮やかな一皿で一気に食欲が刺激された。
新鮮な魚はコリコリと歯応えがあり、文句なく美味しい。自然と三人の顔に笑顔が浮かぶ。その笑顔が「この店にして正解だった」と物語っていた。
以降の注文は魚に詳しい姪に一任した。次々に運ばれてくる料理は、前日のオーダーの失敗を繰り返すまいと慎重に選ばれた品々ばかりで、どれも満足のいく味であった。ただ、私にとっては座席の不便さが障害となり、写真を撮る余裕すらなかったのが残念である。
夜の帳が下りる頃、久しぶりに夜の街へ出た。近くにある道後温泉を車で一周し、温泉場の風情を味わった。柔らかく灯る街の明かりが、旅の終わりにふさわしい風情を演出してくれた。
こうして松山までの1週間に及ぶ旅は、最後の夜を迎えた。
翌朝、目を覚ますと窓の向こうには松山城が遠くに望めた。
旅の締めくくりとして、これ以上ない贅沢な風景であった。
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