香川の旅の結びにー料亭『二蝶』で味わう昼餉

旅行中の食事というものは、往々にして当たりはずれがあるものである。若い頃であれば、多少の外れも旅の一興と笑い飛ばせたが、齢を重ね、残された旅の食事回数が限られてくると、否応なしに一食一食に対する思い入れが深くなる。

とはいえ、どれだけこだわりたくとも、やはり「身の丈」に見合った選択でなければならない。そんな中、今回の旅の最後を飾る昼食として、最も力を入れて選んだ一軒がある。それが、香川県高松市にある老舗料亭「二蝶」である。

ツアーにおいては、「終わり良ければ総て良し」と評価されることがある。旅の締めくくりこそが印象を決めるというのは、言い得て妙である。ならばと、少し奮発し、昼の懐石弁当(7000円)を予約した。どうやらこの昼席は、今年の連休が最後のチャンスだったようである。せっかくの機会である、逃す手はない。

予約から当日に至るまで、二蝶からは丁寧な確認の連絡が入った。二日前には予約確認のメール、当日には時間確認のメールが届いた。目的地の近くに辿り着いたものの、確認メールが気になって落ち着かず、少々早めに店を訪れることにした。

門前には、着物姿の女性がすでに控えており、我々を出迎えてくれた。まさか自分たちのためとは思わなかったが、どうやら本当にそのようであった。玄関をくぐると、今度は女将が両手を揃えて丁寧に迎えてくださった。こうしたもてなしに触れるのは、いつ以来であったか。記憶をたどりながら案内についていくと、長い廊下を何度か曲がり、通されたのは、坪庭付き、さらに専用のトイレまで備えた広間であった。


実は、二蝶を訪れるのはこれが初めてである。料理もさることながら、その佇まいに関心があった。古き良き建物は、年季を感じさせながらも手入れが行き届き、凛とした風格を備えていた。

やがて供された懐石弁当は、漆塗りの弁当箱に彩りよく盛りつけられていた。だが、やはり弁当は弁当の域を超えるものではなかった。冷めた天ぷらに冷たい焼き魚、盛り付けの美しさとは裏腹に、味覚の上では感動を覚えるほどではない。とはいえ、私はこの価格を「場所代」と割り切っていたし、何よりもこの料亭の空間と雰囲気を味わいたかったのだから、その目的は十分に達成されたのである。

食後には別料金のお薄(お抹茶)を頼んだところ、和三盆で鯉のぼりの型に抜かれた干菓子が添えられていた。この小さな菓子が、実に上品で美味であった。季節感を大切にする和の心に触れた一瞬であった。


高松市内には、他にも魅力的な飲食店が多くあるように見受けられた。それでも、あえて「二蝶」を選んだのは、「高松一」と評される所以を自分の目と舌で確かめたかったからである。そして今回、その答えの一端に触れたように思う。ただし、やはり「弁当」ではその真価を測りきることはできなかった。ここは、本懐石の席でこそ、料亭の真髄が現れる場所であるのだろう。

そうした意味では、今回の訪問は大いに意味ある「記念すべき出来事」となった。いつか再び、あの空間で、本格的な料理を味わってみたい。旅の終わりにふさわしい、心に残る体験であった。

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