風はまだ冷たい、それでも庭は賑やかに

三月の連休はかなり高温になると報じられていたけれど、実際には風がまだ冷たい。ガラス戸越しに差し込む光の中にいると、「春うらら」と言いたくなる穏やかさがあるのに、一歩外へ出ると頬に触れる空気は思いのほかひんやりとしている。

それでも庭は、確実に動き出している。日ごとに景色が変わり、あちらでもこちらでも芽が上がってくる。
小さな変化が重なって、庭全体が賑やかになってきた。

秋口に挿し木をしたバラとクレマチスは、思っていた以上によく根付いてくれたようだ。新しい芽が伸びはじめ、それぞれが場所を主張するように葉を広げていく。増やさないつもりでいながら、つい手を出してしまう挿し木。気がつけば株は増え、この狭い庭のどこに植えようかと悩むことになる。
それでも芽吹きを見ていると、その迷いさえも楽しい。

我が家の黄色い水仙は晩生で、ようやく今ごろになって咲き始めた。やわらかな黄色が、まだ冷たい空気の中でそこだけが明るいように見える。
早咲きのチューリップよりも、なぜか普通のチューリップのほうが先に蕾をつけているのも面白い。ふくらみかけた蕾があちこちに見えはじめ、それぞれが順番を待っているようだ。

風はまだ冷たい。それでも、光のやわらかさや土の匂い、次々に動き出す草花の気配が、庭を満たしている。
にぎやかというほどの音はないのに、気配だけがどんどん増えていく。

春は、もうすぐそこではなく、もうここに来ているのだと思う。

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