春うらら、八朔マーマーレードの気づき

急に夏日がやって来た。
梅は咲き、おあつらえ向きの三連休である。
それにしても「春うらら」とは嬉しいものだ。
どこか心が浮き浮きしてくる。

そんな陽気に誘われて、今日は八朔のマーマーレードを作ることにした。
皮をむき、中の白いイワタを丁寧にはがし、三回ほど茹でこぼす。果肉とグラニュー糖を加え、とろとろと弱火で煮詰めていくと、透き通ったオレンジ色の皮が鍋の中でぐつぐつと踊っている。

甘い柑橘の匂いに包まれながら、スプーンでそっと混ぜたところで、ふと違和感がよぎった。
去年と何か違う。とろみが無いのである。
ペクチン不足だろうか。
皮の下の白い部分をきれいに取り過ぎたのかもしれない。
急に心許なくなり作り方を検索してみた。綿はきれいに取って茹でこぼす――確かにその通りにしている。にもかかわらず、鍋の中はさらさらのまま。静かな敗色が漂う。

さらに調べると、こういう時は種を小袋に入れて一緒に煮るとよいらしい。
だが、その種はもうゴミ箱の中である。

鍋の前に立ちながら、少しだけ意地になっている自分に気づいた。
そこで、明日用に取り置いていた文旦のワタを少し取り出し、追加して煮てみた。すると、わずかながらもとろみが現れてきた。マーマーレードは冷めるとさらにとろみが出るという。その言葉を頼りに火を止めた。

失敗したから、次はきっと上手く出来る。
鍋の中で起きたことは、もう分かったのだから。
けれど、ふと気づく。
肝心の八朔は、もう在庫が尽き始めている。

学びは手元に残り、季節の材料は去っていく。
春うららの台所で味わった、ささやかな敗北であった。

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