岐阜の名物ウナギに牛肉時々富有柿 ① ――思いがけず飛騨牛に出会った日

干し柿作りに並々ならぬ情熱を注ぐ家人は、今年も飯田市の市田と奈良県五条市へ柿を求めて奔走した。しかし、今年は訪れていない岐阜県本巣の富有柿がどうにも気になって仕方がないらしい。本巣へ行かなければ、干し柿作りを“やり尽くした”という気分になれないのだという。
そんな家人に付き合うにあたり、私の脳内深くに沈んでいた記憶が蘇った。本巣よりずっと近い養老市には「焼肉街道」と呼ばれる一帯があり、飛騨牛を驚くほど安く販売している店があると聞いたことがある。焼肉を食べる習慣がないため、この記憶は長らく脳の奥底に眠っていた。ところが今回、その記憶が急に浮上し、せっかくなら立ち寄ってみたいという気分が湧いてきた。
ネットで調べると、家から約88キロ。2時間もかからない距離である。そこで早速出かけることにした。
道中は山々の紅葉がまさに絶頂で、山裾まで赤く染まる景色を眺めながらのドライブは実に心地よかった。飛騨牛が手に入らなくても、富有柿がなくても、この紅葉だけで心が浮き立つほどであった。

目的の店に到着したのは、開店時刻の9時半を少し過ぎた10時前。店内を見ると、すでに長い行列ができている。その様子に一瞬足がすくんだが、意を決して中へ入ったものの、この行列の先に何があるのか分からない。と言う状態であった。


違うコーナーにはショーケースの中に、あらゆる部位にカットされ、パック詰めにした飛騨牛が並べられていた。それをカゴに入れて近くのレジに並べば良いと言う方式のようだ。
飛騨牛の等級はA5が最高だと聞く。初めて訪れた店で、しかも思わず二度見するほどの安さである。気がつくと頭は真っ白になり、すき焼き用、しゃぶしゃぶ用、ステーキ用、切り落とし、ローストビーフと、手当たり次第にカゴへ入れていた。カゴはすぐにいっぱいになり、家人に持ってもらっても重そうである。

初回でもあるし、この辺で一度清算しようと思ったところで、今度は「いったい合計はいくらになるのか」という不安が押し寄せた。現金決済と書いてあったような気もする。足りなかったら困るし、カゴの中身はとても事前に計算できない量である。よく確認すると、1万円以上の買い物にはカードが使えると書いてあり、ようやく胸をなでおろした。
恐る恐るレジに並び、打ち込まれていく数字を見ていたが、思ったほど跳ね上がらない。5〜6万円は覚悟していたのだが、清算はまさかの2万6000円。ほぼ半額で済んだことになる。
帰宅して冷凍用に仕分けながら肉を見ると、どれも美しいサシが入り、淡いピンク色に輝いている。店内ではパック詰めの肉が次々と運ばれては、陳列される端から買われていく。この人気ぶりを見ると、きっと味のほうも期待できるはずだ。
今日から少しずつ料理し、もし本当においしいと確信できたら、年内にもう一度訪れても良いかもしれない。
柿も歩けば肉に当る――そんな言い回しを思わず作りたくなるほど、予想外の良い出会いであった。
コメント
この記事へのトラックバックはありません。












この記事へのコメントはありません。