膝の亀裂と、春のひかり

突然の膝のアクシデントから一週間。ようやくMR検査の結果を聞くことができた。
痛めた直後は、膝そのものの痛みよりも、足を床に下ろすことすらできない状況が何よりつらかった。けれど、その痛みも日ごとに少しずつ和らいでいき、今では家具に手をつきながらではあるが、室内を歩けるまでに回復していたので、案外軽く終わるのではないかと思い始めていた矢先であった。
医師の口から告げられた検査結果は、予想よりも重く、「軟骨の亀裂」との診断であった。
走っていたとき、突然「グキッ」と妙な音が聞こえた。その瞬間、何が起こったのか分からなかったが、今になって思えば、あの音こそが膝の奥で何かが壊れたサインだったのかもしれない。
まさか自分の身に、こんなことが起きるとは。
医師の説明によれば、軟骨の擦れ合いによって生じる痛みを抑えるためには、「膝に溜まった水を抜き、ヒアルロン酸を注入する」という処置が必要であるという。
ヒアルロン酸注射――その言葉は、これまで幾人もの友人から話として聞いてはいた。年齢を重ねるにつれ、あちこちの関節に悩みを抱える人が増え、対処法として耳にすることは多かったが、自分が再度受ける日が来るとは、まさに青天の霹靂であった。
医師は、「炎症を悪化させないこと、そして大腿部の筋力をしっかりつけていくことが、回復への最短ルートです」と。焦らず、少しずつ前に進むしかないのだ。

「世間では、桜が満開のようですが、くれぐれも歩き回らないようにしてくださいね」と、医師は言葉を添えた。
おそらく、私の表情に「桜を見に行きたい」と書いてあったのだろう。春の陽気に誘われて、外に出たくなる気持ちは抑えようがない。

その心を汲んでか、家人は朝から団地の中の桜並木、日吉大社の参道、西教寺の境内に車で連れて行ってくれた。
どこも見事に咲き誇り、車の窓越しに眺めるだけでも、心が和らいだ。

私の「春の虫」をどう抑えればよいか、家人はよく知っている。
こうして、ふとした日常の中に、家族の存在の大きさを改めて感じる日々である。自分ひとりでは乗り越えられないことも、支えてくれる人がいれば、道は続いていく。
桜の花が、今年も変わらず美しく咲いてくれた。来年は自分の脚で歩いて行こう。

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