果物が消えた食卓と変わりゆく暮らし

二日ほど買い物に出掛けなかったら、我が家の果物がすべてなくなってしまった。このようなことは今まで経験がない。果物は常にそばにあり、当たり前の存在であった。

昼の食後には八朔、夕食後には文旦を食べることが何よりの楽しみであった。残りの数を気にしながら大切に味わっていたが、ついに昨夜、底を突いてしまった。

食料品店の女将をしていた姪の話によると、最近では林檎はあまり売れないとのこと。周囲の家々は高齢化が進み、店舗に来る客の多くは総菜やお造りを目的に訪れるという。売れない理由を聞けば、「林檎の皮をむくのが面倒だから」とのこと。同じ理由で牛蒡も敬遠されるという。どちらも私の好物であるが、少し寂しく感じる。

林檎や牛蒡の皮をむくことさえ面倒になると、生活全体の質はどうなってしまうのであろうか。高齢者が増え続ける現状において、スーパーの商品も様変わりし、手軽に食べられるレトルト食品がずらりと並んでいる。魚も骨抜きや調理済みが当たり前となっている。いずれ私もお世話になる日が来るかもしれないが、価格を見ると驚かされることが少なくない。

テレビで紹介される年金生活者の実態を見ると、林檎の皮はむけるが、一個三百円を超える林檎には手が出せないという声もある。何もかもを一緒に考えるわけにはいかないが、「食べるものが明日の健康をつくる」と信じ、できるだけ体を使いながら暮らしていくことが大切であると感じる。

これからも、自らの手で食材を準備し、体を動かしながら暮らしていこう。そう思った、果物のない食卓でのひとときであった。

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