ジューンベリーの実る頃に

小さな赤い実が、細い木の上でたわわに実っていた。
「もしかして、ジューンベリー?」
友人の家の玄関先で、風に揺れていたその実を見て思わず声を上げた。
ジューンベリーは、6月に赤くなることからその名がついたと言われている。
それに比べて、ブルーベリーやブラックベリーは、その果実の色で呼ばれているようだ。
そう考えると、ジューンベリーだけは特別に可愛らしい名前をもらった果実と言える。
友人は毎年のように、「明日こそ収穫しよう」と言いながら、翌朝には鳥たちに先を越されて、すっかり実がなくなっていたと嘆いていた。
しかし、今年はどうしたことか、赤く熟しても鳥はほとんど寄りついていない様子である。
暑かったり寒かったりと不安定な気候が、鳥たちの生態にも変化をもたらしたのだろうか。不思議なことである。
せっかく鳥に食べられずに残ってくれた実たち。
今年は久しぶりに、ジューンベリーのジャムを作ることにした。
この可愛らしい果実は、残念ながら皮が口に残るため、丁寧に裏ごしをするというひと手間が必要である。
だが、砂糖と煮詰めて艶やかに仕上がった赤い色は、まるで宝石のようであり、甘く煮えたジャムの香りが部屋に満ちていった。
ひとときの、贅沢な幸せであった。
今年は鳥と分かち合うことなく、ひと瓶のジューンベリージャムが我が家の棚に加わった。
ささやかだが、季節の恵みに心から感謝したい。
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