売国-真山 仁著
「売国」は2014年に週刊文春に連載されたものである。
主役の人物は2人。
ひとりは特捜検事 富永真一
もう一人は八反田遥 宇宙航空研究センター研修生
八反田遥の目を通して宇宙開発の世界を語らせる。
特捜検事と宇宙開発、接点のない二人がどこで交わるのか。
小説の中盤を過ぎてから、少し先が読めるようになったが、それまでは2冊の本を同時に読んでいるようだった。
日本の航空開発は同盟国アメリカの規制によって世界に太刀打ちできないほど後れを取った。
ならば、宇宙へとロケット開発に力を注ぎ発展を遂げたが、高い技術は大陸間弾道弾に応用できるようになると、裏で密かに陰謀が進んでいくのがこの国の現状のようだ。
富永は、陰謀の立役者になる国会議員逮捕の為に、恐ろしく入り組んだパズルを解いていく。
その先にあるものが宇宙開発だった。
それでもエピロールで全容が分かった時は驚かされた。
それほど結末は唐突だった。
真山の視点で見ると検察も正義と言えるものではない。
正義が潰される昨今のニュースからも、その内情が透けて見える。
検察内部には、何十にも張り巡らす蜘蛛の糸が掛けられて、実態はスパイもどきである。
政治家や企業のトップの幾人かはアメリカから献金や報酬を受けてアメリカの協力者(スパイ)になっているのではないか。益々政治不信を抱いてしまう。
と、言うのは真山自身が正義感の塊だからではないだろうか。
不正を感じ取ると徹底して調査する。
それは膨大な参考資料を読み解くことから始まる。
作家は資料の読み解きで、時にフィクションとノンフィクションの境を消してしまうと思うのは私だけだろうか。
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