佐木隆三著 伊藤博文と安重根
佐木隆三著「伊藤博文と安重根」は、私の読書傾向には全くなかった本である。
友達との会話の中で伊藤博文の暗殺者となった安重根の韓国語通訳をしたのが友人の祖父であると言うことが分かった。
友人の祖父は当時20代で京城総督府の役人をしていたが韓国語が堪能だったので通訳に選ばれたそうだ。
古い友人であるけれど、この話を聴いたのはごく最近の事だった。先年韓国では安重根ブームがあり2009年に没後100年記念式が行われたが、この事件の背景が正しく理解されなかったこともあり、通訳をした祖父についてテロリストを通訳したとして誤解されたこともあって、あまり人には話さなかったけれど、最近断捨離中に色々と資料が出てきた事もあって、話のついでにという経緯であったらしい。
私は伊藤博文は満州のハルビンで暗殺されたという知識しかなかったが、この話を聴いて俄に関心を持った
それから、佐木隆三氏が友人に贈った本をお借りして読み始めた。
かなり噛み応えのある本であった。
この本は、日本の初代内閣総理大臣である伊藤博文と、彼を暗殺した韓国の独立運動家である安重根の関係を中心に描いたノンフィクションである。佐木は、二人の生涯と彼らが生きた時代背景を詳しく探求することで、東アジアの歴史における重要な出来事を浮き彫りにした。
伊藤博文は明治維新後の日本の近代化を推進した中心人物である。彼は四度にわたって内閣総理大臣を務め、近代日本の礎を築いた。彼の業績には、日本国憲法の制定、内政の改革、外交政策の整備などがある。伊藤はまた、日韓関係においても重要な役割を果たし、朝鮮半島の政治にも深く関与していった。
安重根は朝鮮半島出身の独立運動家で、伊藤博文を暗殺したことで知られている。
彼の行動は、日本の植民地支配に対する強い反発と朝鮮民族の独立を求める意志の表れであった。
自らの行動を通じて日本の支配に抗議し、朝鮮の独立を訴えた。
彼は逮捕され、裁判の末に死刑に処されたが、その信念と行動は後世に強い影響を与えた。
安重根は、死刑が執行される前に「私の亡骸はハルピン公園の近くに埋めて欲しい。私は天国から国権の回復に尽くす。同心一力して大韓独立の高らかな叫びを天国まで響かせてくれた時、私も欣喜雀躍して万歳を唱えるだろう」と弟たちに遺した。
「伊藤博文と安重根」は、二人の人生と彼らが対峙した歴史的背景を詳細に描いている。
佐木隆三は、伊藤の政治家としての功績とその一方での韓国への影響、そして安重根の独立運動家としての行動とその動機を丹念に描き出した。
特に、伊藤が朝鮮半島に対してどのような政策を取ったのか、そしてそれがどのようにして韓国の独立運動を引き起こしたのかについて詳しく説明されている。また、安重根の生い立ちや思想、そして彼が伊藤を暗殺するに至るまでの経緯が詳細に描かれた本である。
佐木隆三は、伊藤博文と安重根という対照的な人物を通じて、明治期の日本と韓国の関係、そしてその影響を深く掘り下げて著わした、歴史の資料になる本である。
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