人のいない風景の中でも桜は咲いていた ― 震災後の能登半島

能登には、もう一つ目的地があった。
震災後、仮店舗として再開された日本料理店『食堂 海辺の杣径』である。

だが、その前に――
震災以来、初めて訪れる能登半島。
わずかな緊張と、ためらいがあった。

「のと里山海道」を走り、志賀町を過ぎると、風景は変わっていった。

道路は寸断され、至る所で工事が続いている。
トラックが行き交い、重機が並ぶ。

一見、変わらないように見える家々も、近づけばひびが入り、屋根にはブルーシートがかけられていた。


それでも、いちばん印象に残ったのは――
人の姿がないことだった。

工事関係者のほかに、ほとんど人を見かけない。
仮設住宅にも、気配は感じられなかった。

音はあるのに、生活の気配がない。

その静けさが、この土地の変化を何よりも強く伝えていた。

倒壊した家を目にすることはなかった。
けれど、活気もまた、どこにもなかった。

人のいない町は、ただ静かで、寂しい。

工事の影響で、車は思うように進まない。
復旧が進めば、この場所に再び人の姿は戻るのだろうか。
そんなことを考えながら、車を走らせた。
そのとき、視界に入ったのは桜だった。

変わらずに咲いている。

人のいない風景の中で、
それだけが、この土地に残っている時間をつないでいるように見えた。

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