紅葉より人模様──北海道旅のこぼれ話

北海道の旅行を終えて、もう二週間が過ぎた。
旅行中は「紅葉はいまひとつかな?」と思っていたが、今はちょうど見ごろを迎えているらしい。あの時は紅葉こそ今ひとつだったけれど、十月とは思えないほどの温かさだった。
さて、暖かさと紅葉、どちらが良かったのだろうか。私はやはり、寒くても紅葉の美しい方が好きだ。とはいえ、今年の経験はきっと参考にならない。自然に合わせて旅のタイミングを決めるのは、本当に難しい。
旅のこぼれ話
帯広での初日、朝食会場にパジャマ姿で現れる人を見て、思わず目を疑った。
しかもホテルのフロントで「何が悪いのですか?」と言われて、さらに驚いた。
最近は旅先だと、気が緩んでしまう人が増えているようだ。
もし、人前にパジャマで現れても恥ずかしいと思わない時代になっているのだとしたら、日本の行く末は少し心配である。
二泊目は小さなオーベルジュ。
部屋にはこのように書かれた紙が置かれていた。


まさかオーベルジュの夕食にスリッパで来る人がいるのかと思ったが、わざわざ書かれているということは、実際にいるのだろう。
旅は人を解き放つというけれど、どうやら行き過ぎてしまう人もいるらしい。
旭川では、朝食会場の入口で「食事中」と書かれたカードを渡され、まず席を確保するシステムだった。
ただ、そのカードはどれも同じデザイン。これで本当に間違わないのだろうか、という不安が頭をよぎった。

プレートを持って席に戻ると、私たちのテーブルではすでに三人の女性が食事を始めていた。
その後ろでは姪が落ち着かない様子で座っていて、「テーブルが違っていると思う」と言う。
確かに一番前は人通りが多いので、私たちは二番目のテーブルを選んだはずだ。
「まあ、どこでもいいよ」と言って食事を始めたが、しばらくすると前方が騒がしくなった。
どうやら、前の二人用テーブルに「ここは私たちの席だ」と主張するご夫婦が現れたようだ。
どうやら五人で横並びに二つのテーブルを確保したらしく、リーダーらしい女性が「この並びでリザーブしているので私たちは正しい」と言い張っている。
しかし、実際にはそのグループは、一列ずれているのだ。
食事処は一気に緊迫した空気に包まれ、見ていられず仲裁に入ることにした。
「こちらのテーブルは私たちの席なんです。お食事中でしたので後ろを使わせてもらっていました。ということは、その二人席が本来こちらのご夫婦の席になりますね」と伝えると、リーダーの女性はすぐに「申し訳ありません」と謝った。
ところがその後、ご夫婦は食事中の二人を後ろの席へ移動させてしまったのだ。
誰も使っていないきれいな席が空いているのに、である。
私は唖然とし、仲裁せずに成り行きを見ていればよかったと反省した。
しかし騒々しさは、朝食会場が一時、まるで猫と犬の喧嘩のようだった。
それにしても、五人もいて席を間違えるものだろうか。
グループ旅行では、誰かが少しでも確認すれば防げたはずだ。
一方で、ご夫婦のように「自分たちは正しい」と強く主張する姿も考えさせられる。
正しさを貫くことは悪くない。けれど、周囲の雰囲気や他人への配慮を欠いてしまっては、本当の意味で“正しい”とは言えないのではないか。
旅先では、紅葉よりも人の振る舞いが印象に残ることがある。
自然の美しさも、人間の面白さも、どちらも旅の醍醐味なのだろう。
紅葉はいまひとつだったけれど、人間模様に満ちた北海道の旅だった。
次に訪れるときは、寒くてもいい。見事な紅葉を見ながら、もう少し穏やかな朝食を楽しみたい。
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