NHK番組 沁みる夜汽車

先日、森田美由紀アナウンサーの語りによる「沁みる夜汽車」の特集を視聴した。 過去放送から珠玉の5本を厳選した内容で、どれも心に深く響いた。感銘を受けたのは、ある女性の人生を描いた話だった。

昭和44年、28歳の女性が大阪から山形の彼の両親に一人で挨拶に向かうこととなった。 大振り袖の晴れ着を着て、緊張と期待を胸に旅立つが男性の家では結婚は早いと反対されているようだった。
女性は28才、焦りがあった。相手方のご両親に認めて欲しいと一途な思いがあった。

当時、湖西線はまだ開通しておらず、彼女は東海道線米原経由で山形へ向かう電車に乗った。
北陸から先は雪になった。雪は段々ひどくなり、糸魚川で電車は停まった。
電車はそれから先へは進めなくなって、大阪に引き返すことになった時、彼女は思わず「やりきれませんねえ。」と呟いた。
その時、隣に座っていた紳士が彼女にこう言葉をかけた。
「やりは、切るものではありません。通すものです。やり通しなさい。」といって、山形に行く方法は他にもあると電車を教えてくれた。
この一言が彼女を勇気づけた。彼女は諦めずに別の道を探し、米原から東京へ、そして東京から山形へ3日目に到着した。
駅には彼が出迎えていた。彼女の努力と真心を感じた彼の両親も温かくの彼女を迎え入れ、その年の春、二人は結婚した。
彼女はその後の人生で、あの男性の「やり通しなさい」という言葉を座右の銘として生きた。
その彼女も2020年に、彼は2023年春にこの世を去った。

この思い出のエピソードで私が心に刻んだのは、「やりは通すもの」だから「やり通しなさい」という言葉の重みである。人生には思わぬ困難が立ちはだかることがある。やりきれない時に勇気をもってやり通すことを考える。
「やり通す」という言葉は、ただ目標を達成することを意味するわけではない。
それは、何があったとしても自分の信念を曲げず、途中で諦めずに最後まで貫く強い覚悟を表している。
今後の人生でも多くの障害にぶっつかるだろう、その言葉を思い出し、自分を励ます柱にしようと思う。

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