顔だけ薬疹?謎のかゆみと大病院での珍体験

京都は朝から日傘が役に立たないような暑さだった。アスファルトから来る照り返しは避けようがなかった。
病院前の信号を待つ間も体が溶けそうだった。
そんな中、薬を飲むと、どんな種類でもなぜか発疹が出るようになってしまった。
かかりつけ医からは「これは詳しく調べた方がいいですね」と言われ、大病院の皮膚科を紹介された。そこでの受診が今日のことだった。
診察室での問診のあと、医師は「薬疹なら、ふつうは体に出るものなんですが……」と、首をかしげるばかり。私のように顔だけに出るのは珍しいらしい。
そこで、診察は次の段階へ。
「では、この赤くなっている皮膚を一部、切り取って調べましょう」
そうサラリと説明され、ベッドに横たわる。
手術用の無影灯が顔の上にせり出し、まるでドラマの手術シーンのよう。マスクを外し、鼻から続くほうれい線の上あたりがターゲットとなった。
消毒してくれる間も、心の中では「えっ、顔を切るの?本当に? 」と落ち着かない。
麻酔注射の前には「ちょっとチクッとしますよ」と声がかかった。実際、針が入る瞬間はたいしたことはなかった。
ところが次のひと言が違った。
「では、今から麻酔液を注入しますね。ちょっと痛いですよ」
ちょっと、どころではなかった。
目元から額までギュッと力が入り、思わず手がピクリと動く。しばらくして、「もう一度、入れますよ」と二発目。さすがにこれは想定外。
そのあとは麻酔が効き、あっという間に切り取り完了。縫合も終わって「はい、終わりましたよ」と言われたときは、なんとも言えない達成感すらあった。
検査の結果は約2週間後にわかるとのこと。切り取った部分は小さく縫われ、「1週間後に抜糸に来てください」と言われた。さらにリンパ球刺激試験(薬に対するアレルギー検査)も受け、ようやくすべて終了。
それにしても、広い院内を何度も移動させられ、すっかり疲れてしまった。ようやくカフェにたどり着き、コーヒーを頼む。マスクを外して一息つこうとしたそのとき——。
口元に貼られた大きな絆創膏が、鼻から唇まで覆っている。コーヒーがまともに飲めない。麻酔のせいで感覚が鈍っていたせいか、こんな状態になっているとは気づいていなかった。
車に戻ってミラーを見て思わず絶句。なんという顔だ。周りの人たちは目のやり場に困っただろうな。
家に帰ると、家族は驚くやら、吹き出すやら。笑いながらも、ちょっと心配してくれた(と思いたい)。
薬疹の原因はまだ分からないけれど、人生初の顔面生検体験は、なかなか得がたい一日だった。
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