黙示‐真山 仁著

著者の真山さんの講演を一度聴いたことがある。
けれど、その時に深い感銘を受けたということは無かった。
読み始めると、のめり込む本を書く真山と言う人間に興味があったからで、未だ真山作品を読み込んだと言えるほではなかったから私の準備不足で勿体ない事をした。

「黙示」は10年前に刊行されているけれど、現在の日本を反映しているようで、一気に読んだ。

農薬は毒なのか。
農薬を使わず、干ばつの土地でも生育する遺伝子組み換え食品を人間は創り出している。
利益追求の為に又経済効果の為に人は生命の安全を差し出すのか。

プロローグは、農薬を散布するラジコンヘリが小学生の集団に墜落し、農薬「ピンポイント」の開発者の息子が重篤な症状に陥った。
そこは無農薬栽培をする静岡の茶畑で、子供たちはミツバチの養蜂教室に来ていた。
ミツバチは農薬にはデリケートで常に危険にさらされる存在である。
ラジコンヘリの操作ミスが原因とされるが、農薬の濃度は人が撒く時の4000倍を8倍と言う高濃度で撒いていた。

正しく使えば薬、間違えて使えば毒になるのは医薬も農薬も同じ理屈ではある。
「遺伝子組み換え食品」には農薬は要らないと言う考えと、安易に受け入れるべきではないのでは時期尚早ではないかという、農薬会社、養蜂家、外資、官僚、国会議員が入り乱れて展開していく。
トウモロコシや大豆に遺伝子組み換えがされていて日本は家畜用飼料に遺伝子組み換え食品を輸入しているとこの本で知った。
その飼料を食べた動物の肉を私達は既に食べているという現実。
また日本の人口減少の反対で世界は人口爆発している国もある。
干ばつで何処の国も農地はひっ迫している。
その内食料の争奪戦が始まる気配がある。
日本は休耕田が増えているが、休耕田に中国は目をつけているのではないか。
漁場も中国、韓国の船が増えて漁獲高は減る一方、農産物も減って大丈夫なのだろうかと「黙示」を読みむと不安になった。

そして、市井の徒の知らない所で大きな物事は決められていく。
外資から金を渡されれば嬉々とそちらに向いてしまう国会議員もいるのでは?
お金があれば他国を動かす力にもなる。
私たちは正しく政治家を選ばなければそのツケは命と引き換えになるやも知れない。

世の中に鋭い視線で警鐘を鳴らす真山作品は、ノー天気な私に電気ショックが走ったようだった。

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