葉菊の露 ‐ 澤田ふじ子著 

久しぶりにしっとりとした本を読んだ。
読書家のSさんのお薦めがなかったら、自分からは手に取らない本だった。
Sさんのおかげで新しい分野の本を読むきっかけが出来た。

戊辰戦争の会津若松といえば白虎隊が有名だけれど、郡上八幡の藩士が加勢した話はどれくらいの人が知っていただろうか。
私は葉菊の露を読むまでは全く知らなかった。
最近歴女が多いというが、こういう本を読むと俄然歴史本が面白くなる。

慶応3年、大政奉還となり郡上潘は朝命に従って藩主は上京し勤王に傾いた。
ところが江戸藩邸では佐幕の一派があり幕府軍が勝利した時の事を考えて藩士47名を密かに脱藩させて幕府側の一隊とする凌霜隊を結成した。
この本は凌霜隊の話である。

時の勢いは薩長率いる勤王に加勢し、佐幕の潘、特に会津若松潘は悲惨な結果になった。
この時に凌霜隊は鶴ヶ城で会津若松潘と共に官軍と戦った。
結果は一ヶ月の籠城の後開城した。
この頃は「八重の桜」の八重も鶴ヶ城で鉄砲隊として戦っている。
また、鳥羽伏見の戦いで活躍した新選組の土方才三や斎藤一、近藤勇も加勢しているようだ。

余談になるが、鶴ヶ城にも八幡城にも行った事があるけれど、歴史背景を深く知らなかったので、景色を眺めてお城を降りてしまった。
今にして思えばもったいない。

鶴ヶ城を開城し、会津藩の藩士は謹慎になり後に青森県むつ市に新天地を求め多数移住した。
そして、凌霜隊にも厳しい現実が始まる。
密命で佐幕派の隊員にさせたにもかかわらず、国元では彼らを罪人として処した。
新政府の目を欺く目的としても、悲惨な牢獄生活だった。それでも、凌霜隊員は節度ある姿勢を貫き、残された家族達の心の底を通わせる話に感動する。

この本で初めて「世間の棺」という言葉に出会った。
なんと強い言葉であろうか。
人の噂も七十五日というけれど、そう容易くはないということをこの言葉は物語る。
それにも耐えなければならない生活が隊士や家族を苦しめる。

鶴ヶ城で負傷した斎藤造酒之介がそこで彼を看病した美知との恋愛と小者から凌霜隊に入れるために藩士として扱われた久七との友好も物語を膨らませている。

心のクリーニングをするような一冊だった。 感謝

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