続・帰ってきた泉屋博古館 ~近代の美術、もうひとつの在り方~

京都・泉屋博古館にて開催中の展覧会「続・帰ってきた泉屋博古館 ~近代の美術、もうひとつの在り方~」を拝観した。1970年の大阪万博の年に開館した同館が、2025年の万博に呼応するかたちで開催している企画展である。

今回特筆すべきは、展覧会用に制作された作品ではなく、須磨の住友本家の居間や応接間を飾り、客人をもてなすために収集・設置された作品が多く展示されている点であろう。美術館展示とは趣を異にする、美と生活との結びつきが浮かび上がる内容であった。

会場に足を踏み入れてまず目を引くのは、香田勝人による《乱菊図》である。大画面に咲き乱れる菊は、力強さと華やかさを兼ね備えており、冒頭から鮮烈な印象を与える。展示の終盤には、木島櫻谷の《菊花屏風》と《燕子花図屏風》が静かに控えていた。いずれも客間に飾られていたものであり、大正6年の作ながら、まるで現在に描かれたかのような瑞々しさを保ち、観る者の目を惹きつけていた。

展示作の中でも、最初に視界に入る板谷波山の《葆光彩磁珍果文花瓶》はひときわ際立っていた。この花瓶には「葆光(ほこう)」と呼ばれる釉薬が施され、柔らかな光を帯びた独特の輝きを放っている。また、本作は近代陶芸として初めて重要文化財に指定された作品でもあり、今回の展示の中で唯一の重文指定作でもある。

展示空間は整然としており、照明や解説も過不足なく、作品と落ち着いて向き合うことができた。派手さはなくとも、展覧会の企図が明快に伝わる佳展であった。

「もうひとつの在り方」とは、展覧会での評価や美術史の中心的文脈とは異なる、個人のまなざしによって収集された美術品の在り方であろう。日常の空間に作品を迎え入れ、作家の実験や冒険に対して共鳴し、支援するような収集の姿勢が随所に感じられた。

泉屋博古館という場が持つ時間の厚みとともに、静かな問いを観る者に投げかける展覧会であった。

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