贅沢なタンゴの午後 in 京都五条「ワイン&ハイボール つちや」

京都五条の「ワイン&ハイボール つちや」で贅沢なタンゴ・コンサートが開かれた。
ワインバー等に足を踏み入れたこともないので、ワクワクドキドキでドアを開いたが、昼間のワインバーはお洒落なカフェと変わらない雰囲気だった。
京都駅からも近いけれど、一歩踏み込むと京都らしい露地もあって、雰囲気のあるところだった。

このバーには、かつてリオネル・メッシがカウンターに座ったという驚きのエピソードがある。マスターはサッカーに疎くメッシを知らなかったらしい。アルゼンチンという国名からタンゴを話題にして会話を続けたそうだ。
何と勿体ない。思わず、どの椅子?と辺りを見回した。

店内は13人で満席となる小さな空間であり、当日ももちろん満席であった。
入り口のドアを開くと正面にバイオリンの麻場とバンドネオンの門奈が座っていらして、驚いた。
ここはバーなので楽屋が無かったのだ。ゲストとステージの距離はこれほど近いコンサートは知らない。

午後2時、アストル・ピアソラ作曲の「リベルタンゴ」によってコンサートが幕を開けた。

麻場利華の関西弁によるMCは温かみがあり、作曲家の人生を背景にしたトークが展開された。
界の巨匠であるピアソラは、タンゴ歌手カルロス・ガルデルに7歳の時に見いだされ、ガルデルと同じ飛行機に乗るように勧められたがそれを断り、悲劇の飛行機事故から免れたという逸話が語られた。
もしピアソラがその飛行機に搭乗していたら、「リベルタンゴ」は誕生しなかった。

演奏に耳を傾けているうちに、映像でしか知らないブエノスアイレスの街並みや、目の前で繰り広げられるアルゼンチンタンゴのダンスの光景が頭の中に思い浮かんだ。バンドネオンとピアノの響きに重なるバイオリンの切ない旋律が織りなす音楽に包まれて、タンゴの持つ深い情熱と哀愁が一瞬にして心を掴んだ
タンゴのリズムに身を委ね、異国の風を感じるこの特別な午後は、まるで小さな劇場での独占公演のようであった。

コンサートの後、ふと店内のメッシが座っていたであろう椅子に目が向かう。 この小さな空間には、様々な出会いが交差しているのだろう。

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