権兵衛峠のカラマツ紅葉

産直市場グリーンファームを出たのは、午後3時半を少し回った頃であった。
ここからの帰路には、毎年の恒例行事がある。年に一度だけ訪れる中津川の「すや」にて、「栗汁粉」をいただき、秋の小旅行を締めくくるのである。

中津川まではおよそ90キロ。国道では2時間かかる。高速を使えば1時間ほど早く着ける。高速に乗れば明るいうちに「すや」に到着できる計算で、思わずハンドルを高速の方へと切りかけた。
しかし、そこでふと気づいた。高速に乗っては、あの権兵衛峠の紅葉が見られないではないか。

毎年楽しみにしているのが、峠のカラマツの紅葉である。関西では決して目にすることのできない光景だ。黄金の針と称されるほど美しく、陽に輝くその姿は息を呑むほどである。風が吹けばサラサラと音を立てて散る様もまた見事で、言葉に尽くしがたい。うっかり「栗汁粉」に心を奪われ、高速に乗りかけた自分を苦笑しつつ、やはり峠道を行くことにした。

とはいえ、気が急いていると権兵衛峠までは思いのほか遠い。それでも道沿いの紅葉は見事で、右に左にと山が燃えて迫って来る。カラマツはまっすぐ天を突くように立ち並び、黄金の枝を広げている。風はなく、車中は汗ばむほどの暖かさであった。もう数日、この美しさは保たれるであろうか。
国道19号線、木曽路の道はまさに紅葉のトンネルである。どこを向いても山、また山。そのすべてが色づき、秋の光を浴びて輝いている。桜にはない、山全体が燃えるようなダイナミックな美しさである。

午後5時を過ぎると、山間はあっという間に夕闇に包まれた。中津川まではあとわずか。ナビの表示では到着予定は17時47分。少々ぎりぎりである。念のため「すや」に電話を入れた。
「閉店時間は6時ですね?」
「いえ、甘味処は午後5時45分まででございます。」
時計を見ると、すでに17時44分。
「あと2分で着きますが……」
「申し訳ございません。」

結局、「栗汁粉」にありつくことはできなかった。名残惜しさを胸に、反対方向へハンドルを切り、中津川インターから高速に乗った。
だが、不思議と後悔はなかった。
「栗汁粉」と「カラマツの紅葉」を天秤にかけ、後者を選んだ自分に満足していたからである。

真っ暗な高速道路を、工事渋滞を抜けながら帰路についた。心は軽かったが、体はさすがに限界であった。
それでも思う。来年こそは、カラマツの紅葉と「栗汁粉」の両方を楽しめるよう、時間配分を工夫しようと。

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