風の盆

白川郷 2月
最近ますます有名になった風の盆に初めて行ったのは10年以上も前のことである。
地元の人のお誘いだったので、風の盆は9月3日の夜中に限るといわれてのっけから通気取りの見物になった。
3日の深夜には観光バスは引き上げ八尾は初めて素顔のまちにもどり、自分達の為に踊ると聞いていた。
それでも徹夜を厭わない常連さんばかりで道の両側に隙間を見つけるのはむつかしい。
坂の町百選に選ばれた緩やかな坂の両側に低い屋根の民家が軒を並べ、ぼんぼりだけを灯した坂道を短い踊りの列が目の前を過ぎて行く。
胡弓を腰の低い位置にかまえ、少し腰をひねりながら低い声で「おわら節」を唄い出す。
踊り手の所作に酔いしれ、胡弓と三味線の音色に息が止まる。ザッザッと踊り手の足さばきの音の他は、胡弓と低く唄われるおわら節だけである。
観客はホ-ッと声にならない声をあげ、息をのむ。
胸の琴線をつかまれて、動けないというのが本音だろうか。
この世とあの世がまじわるならば、この町のこの時ではないだろうか。
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