パイナップル合唱団 ― 認知機能検査を受けて

運転免許の更新に必要な「認知機能検査」を受けてきた。対象は75歳以上。
会場の空気は明るいとは言えない。だが中に入ってみれば、妙な笑いを誘う場面が多かった。
まず耳に引っかかったのが指導員の言葉遣いである。敬語でもなく、フレンドリーでもなく、なぜか「上から目線のお子様対応」耳の遠い人への配慮なのだろう、声を張ってゆっくり話すのは理解できる。しかし「私の声が聞こえない人がいたら挙手してください」と真顔で言われたときには、会場中が「それ、どう確認するの」と心の中で突っ込んでいたに違いない。
記憶テストは、4こまの絵を4枚、つまり16枚覚える方式。今回はDパターンで「筆」「ヘリコプター」「ズボン」「パイナップル」など。指導員が読み上げ、それを大人たちが一斉に復唱するのだが、この光景が実にシュールである。白髪の紳士淑女が園児のように声をそろえて「パイナップル!」と叫ぶのである。
合唱団にしては選曲があまりに独特だ。
一番面白かったのは、ある女性の質問だった。
「筆と言われましたが、鉛筆でもいいですか?」
これに対して指導員は「これは筆です」と、にべもなく答えた。
この瞬間、誰もの脳裏には「筆」が強く印象付けられた。
まさに本日の名場面である。
予定は2時間だったが、内容的には1時間で十分な感じである。もっとも、丁寧にゆっくり説明しないと混乱する人もいるのだろう。だが、過ぎた親切心がときに人を子ども扱いに変えてしまう。それがまた可笑しくもあり、切なくもある。
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