柄杓は耳かきにはならない

台所で片付けをしていた姪が「小さいほうのラップが無くなった」と声をかけてきた。
私は「ほら、そこに大きな方があるでしょう。それを使って。大は小を兼ねると言うじゃない、ね」と返した。

その瞬間、姪から返ってきたのは思いがけない一言。
「ひしゃくじゃ耳は掻けません。」

一本取られた、である。思わず大爆笑となった。

私は長年「大は小を兼ねる」派であった。
大きなバッグがあれば小物も大物も入るし、大きな傘を持っていれば小雨なんてへっちゃら。大きければ大抵のことはなんとかなる。そう信じて疑わなかったのである。

しかし、柄杓で耳は掻けない。これは痛烈である。
耳かきをするには大きすぎて不向きどころか、危険ですらある。つまり「大は小を兼ねる」には例外がしっかり存在するのだ。

冷蔵庫もそうである。大容量はありがたいが、缶コーヒー一本を冷やすなら小型の方が出し入れしやすい。
車もそうである。大きな車は荷物を積むには最強だが、細い道では冷や汗もの。軽自動車の安心感に勝るものはない。

どうやら「大は小を兼ねる」は万能の法則ではなく、「大が良いときもあれば小が輝くときもある」という程度の話であったらしい。

「柄杓は耳かきにはならない」。
姪のこの一言は、規模の大きさや力強さが常に正解ではないことを鮮やかに突きつけてきた。道具も仕組みも人の考え方も、それぞれに適したサイズと役割がある。

結論をことわざ風にまとめるなら――
「大は小を兼ねる。ただし耳かきは除く」。

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